
講師自身が「何か」にとらわれすぎていないか?相手に届く伝え方へ整える実践ステップ
はじめに
Day1では、講師自身の中にある「とらわれ」が、相手を見る前の決めつけや、自分の正しさを優先する形で表れやすいことを整理しました。 Day2では、そのとらわれが実際に伝え方や見せ方にどうにじむのか、そしてクライアントを変にくくって伝えてしまう危うさを見てきました。
では実際に、どう整えていけばいいのでしょうか。 ここで大切なのは、自分の強みや世界観を消すことではありません。 また、無難な言葉に変えて個性をなくすことでもありません。
本当に必要なのは、自分の中にある強い見方をいったん脇に置いて、目の前の相手に合う形で言葉を渡せるようにすることです。 それができるようになると、同じ内容を伝えていても、相手の受け取り方は大きく変わります。 「言っていることはいいけれど、なぜか届きにくい」という状態から、「この人の言葉は自然に入ってくる」という状態へ変わっていきます。
Day3では、セッション、講座、SNS発信、案内文などで実際に使えるように、自分のとらわれを見直しながら、相手に届く伝え方へ整えるための実践ステップを、できるだけわかりやすく具体的に整理していきます。
目次
- 伝え方を整えるときの前提
- 実践ステップ1 自分の決めつけに気づく
- 実践ステップ2 相手の言葉をそのまま受け取る
- 実践ステップ3 解釈より確認を増やす
- 実践ステップ4 抽象語を具体化する
- 実践ステップ5 相手を変にくくらない言い換えを持つ
- すぐ使える見直しテンプレート
- Day3のまとめ
伝え方を整えるときの前提
まず大事にしたいのは、伝え方を整えることは、自分を否定することではないという点です。 講師として長く活動してきた人ほど、「今までのやり方が間違っていたのだろうか」と感じてしまうことがあります。 ですが、そうではありません。
これまでの伝え方は、その時々の自分にとって必要な形だったはずです。 ただ、経験を重ね、出会う相手の幅が広がっていく中で、より細やかな見方が必要になるだけです。
もうひとつ大切なのは、届く伝え方とは、やさしい言い方をすることだけではないということです。 ときにははっきり伝えることも必要です。 けれど、そのはっきりが相手を置いていく形なのか、それとも相手の今に合わせた上での明確さなのかで、届き方はまったく変わります。
つまり整えたいのは、言葉の強さではなく、言葉の向け方です。 自分の正しさを押すための言葉ではなく、相手が受け取れる位置に差し出す言葉に変えていくことが、ここでの実践になります。
実践ステップ1 自分の決めつけに気づく
最初のステップは、とても基本的ですが最も重要です。 それは、自分がどの場面で無意識に決めつけているかに気づくことです。
人は、自分ではフラットに見ているつもりでも、実際には過去の経験、成功パターン、自分が学んできた考え方を通して相手を見ています。 そのため、気づかないまま「この人はこういうタイプ」「この悩みの原因はこれ」「ここを整えれば変わる」と早い段階で意味づけしてしまいやすくなります。
とくにスピ系講師は、見えたことや感じたことが当たる経験を重ねているほど、自分の感覚に自信を持っています。 それ自体は強みですが、その感覚が先に立ちすぎると、相手がまだ言葉にできていない部分まで、こちらでまとめてしまうことがあります。
まずは、セッションや発信の前後に、次のような問いを自分に向けてみてください。
- 私はこの人を、どんな枠で見ようとしていたか
- 話を聞く前から、どんな答えを用意していたか
- この人の悩みを、自分の慣れた解釈に当てはめていないか
- 相手の言葉より、自分の見立てを優先していなかったか
この問いに答えるだけでも、自分の中にある前提が少しずつ見えてきます。 決めつけをなくそうとするより、まず「私は今こう見やすいのだな」と気づけることが第一歩です。
実践ステップ2 相手の言葉をそのまま受け取る
次に大切なのは、相手の言葉を、すぐに解釈せずそのまま受け取る力です。 これは簡単そうに見えて、実は多くの講師がつまずきやすい部分です。
たとえば相手が「発信しようとすると止まってしまうんです」と言ったとき、こちらがすぐに「それは自己表現への怖さですね」「否定された記憶があるのかもしれませんね」と意味づけしてしまうことがあります。 もちろん、その可能性はあるかもしれません。 ですが、相手の中では「何を書けばいいかわからない」「家族に見られるのが気になる」「前に投稿したとき反応がなくて恥ずかしかった」など、まったく別の中身を持っているかもしれません。
ここで必要なのは、相手の言葉を講師がすぐに翻訳しないことです。 まずはそのまま受け取り、もう少し相手の言葉を引き出します。
たとえば次のような返し方ができます。
- 止まってしまう感じって、どんなときに一番強く出ますか?
- そのとき、頭の中ではどんなことが起きていますか?
- 止まるというのは、不安に近いですか、それとも迷いに近いですか?
- いちばん引っかかるのは、何についてでしょうか?
このように聞くことで、相手自身の言葉が出てきます。 その言葉が出てから整えるほうが、ずっと自然で、ずっと深く届きます。 講師の役割は、早く答えることではなく、相手が自分の中を言葉にできるように支えることでもあります。
実践ステップ3 解釈より確認を増やす
自分の見立てがあるときほど、いきなり断定せず、確認をはさむことが大切です。 確認をはさむだけで、相手を変にくくる伝え方はかなり減ります。
たとえば、講師として「この方は、自分を厳しく見すぎている」と感じたとします。 そのときに「あなたは自分に厳しすぎます」と言い切るのではなく、 「今のお話を聞いていると、ご自身にかなり厳しくしている感じも少し受けるのですが、そのあたりはどう感じますか」 という形にすると、相手が自分で確かめながら受け取ることができます。
この違いはとても大きいです。 言い切りは、当たっていればインパクトがありますが、少しでもずれると相手を閉じさせます。 一方で確認は、相手に自分の感覚を取り戻してもらいながら進められるので、信頼が積み上がりやすくなります。
確認の言葉として使いやすい表現には、次のようなものがあります。
- こういう見方もあるかもしれませんが、どうでしょうか
- 少し違うかもしれませんが、私はこう感じました
- もしかすると、こういうことも関係していますか
- もしずれていたら遠慮なく違うと言ってくださいね
これらの言葉は、自信がないから使うのではありません。 相手の内側を尊重しながら進めるために使います。 講師の見立てを押しつけず、相手の感覚と合わせていくことが、届く伝え方の土台になります。
実践ステップ4 抽象語を具体化する
スピ系の表現は、どうしても抽象度が高くなりやすいものです。 それ自体が悪いわけではありませんし、感覚的な言葉だからこそ届く相手もいます。 ただ、抽象語だけで終わると、相手は受け取ったつもりでも行動に移しにくくなります。
そこで意識したいのが、抽象語のあとに「それは具体的にどういうことか」を必ず添えることです。
たとえば、次のような形です。
| 抽象的な言い方 | 具体化した言い方 |
|---|---|
| もっと自分を信じてください | すぐに正解を探す前に、今の自分が何を感じているかを先に認めてみてください |
| 流れに乗ることが大切です | 全部を一度に決めようとせず、今できる小さな一歩から動いてみることが大切です |
| 本来の自分に戻りましょう | 人に合わせて決める前に、自分が本当はどうしたいかを一度言葉にしてみましょう |
| 受け取る許可を出してください | うまくいったときに遠慮したり打ち消したりせず、まずはそのまま受け取ってみてください |
この具体化をするだけで、相手が実際に何をすればいいのかが見えやすくなります。 美しい言葉や深い言葉を使うことよりも、相手の今の行動に橋をかけることが大事です。
実践ステップ5 相手を変にくくらない言い換えを持つ
講師自身のとらわれが出やすいのは、相手を説明するときです。 とくに気をつけたいのが、「あなたはこういう人です」「このタイプですね」とまとめてしまう言い方です。
もちろん整理のために傾向を捉えることはあります。 ですが、それをそのまま相手に返すと、相手は理解されたと感じるより、決められたと感じることがあります。
そこで役立つのが、くくる言い方を、開いた言い方に変えることです。
たとえば次のように言い換えられます。
| くくりやすい言い方 | 開いた言い換え |
|---|---|
| あなたは自己否定が強いですね | ご自身にかなり厳しくなりやすい部分があるのかもしれませんが、どう感じますか |
| 発信できないのは自信がないからです | 発信が止まる背景には、いくつか理由がありそうですが、何が一番大きいと感じますか |
| お金のブロックがありますね | お金に関して慎重になる理由が、あなたの中に何かありそうですね |
| 受け取れないタイプですね | 受け取ることに少し構えや遠慮が出やすいのかもしれません |
この違いは小さいようでいて、とても大きいです。 相手は、言い換えられるだけで自分の感覚を残したまま話しやすくなります。 そして講師側も、決めつけの強い伝え方から自然に離れやすくなります。
すぐ使える見直しテンプレート
ここまでの内容を、実際のセッションや発信で使いやすくするために、見直しテンプレートとしてまとめます。 文章を書く前、話す前、セッション後の振り返りに使ってみてください。
発信前のチェック
- この文章は、誰かをひとくくりにしていないか
- 読んだ人が「決めつけられた」と感じない言い回しになっているか
- 抽象的な表現のあとに、具体的な説明があるか
- 正しさを押し出しすぎて、安心感が減っていないか
- 相手が自分で考えられる余白が残っているか
セッション中のチェック
- 私は今、相手の言葉を聞いているか、それとも自分の解釈を見ているか
- 言い切る前に確認を入れているか
- 相手がまだ言葉にしていないことを、こちらが先回りしすぎていないか
- 安心より先に気づきを与えようとしていないか
- 相手の背景を一つの意味づけで終わらせていないか
セッション後の振り返り
- 私はどんな前提でその人を見ていたか
- 相手の話のどこで、自分の中に結論が生まれたか
- その結論は、本当に相手の言葉から来ていたか
- もっと確認できた場面はなかったか
- 相手を変にくくらずに伝えられたか
このテンプレートは、完璧にこなすためのものではありません。 ひとつでも意識できる項目が増えるだけで、伝え方は確実に変わっていきます。
実践例 発信文を整えるビフォーアフター
ここでは、実際によくある発信文を例にして、どのように整えると相手に届きやすくなるかを見てみます。
ビフォー
発信できない人は、自分を信じられていないだけです。 本当の自分に戻れば、言葉は自然に出てきます。 まだ出せないなら、受け取る許可ができていないのかもしれません。
アフター
発信が止まるとき、その背景はひとつではありません。 何を書けばいいかわからないこともあれば、人にどう見られるかが気になることもあります。 まずは、自分がどこで止まりやすいのかを丁寧に見ていくことが大切です。 その上で、うまく書こうとする前に、今の自分が本当は何を伝えたいのかを少しずつ言葉にしていくと、自然に出てくるものがあります。
ビフォーの文章は、一見すると力強く本質的に見えます。 ですが、読む人によっては「もう決めつけられている」「私の背景は見てもらえない」と感じる可能性があります。 一方でアフターは、相手の背景に幅を持たせ、具体的な入口を示しながら、押しつけを減らしています。 この違いが、相談につながる安心感を生みます。
Day3のまとめ
相手に届く伝え方へ整えるために必要なのは、話し方のテクニックを増やすことよりも、講師自身の見方をやわらかくすることです。 どれだけ経験があっても、どれだけ見えていることがあっても、それを相手にそのまま当てはめてしまえば、伝え方は狭くなります。
だからこそ、まずは自分の決めつけに気づくこと、相手の言葉をそのまま受け取ること、解釈より確認を増やすことが大切です。 さらに、抽象語を具体化し、相手を変にくくらない言い換えを持つことで、同じ内容でもずっと自然に届くようになります。
届く言葉とは、強い言葉でも、きれいな言葉でもありません。 相手が「この人は私をちゃんと見てくれている」と感じられる言葉です。 その土台が整うと、発信もセッションも講座も、信頼の積み重ね方が変わっていきます。
Day4では、こうして整えた伝え方をさらに深めるために、どこでズレが起きやすいのか、そして継続的に見直していくための改善ポイントを整理していきます。
相談をご希望の方へ
自分では気づきにくい決めつけや、相手を変にくくってしまう伝え方の癖は、少し客観的に見直すだけで大きく変わることがあります。 発信、講座、セッションでの言葉を整えたい方は、LINEからご相談ください。
あなたらしさや強みを消すのではなく、相手に届く形へ整える視点を、一緒に丁寧に整理していけます。
FAQ
確認しながら話すと、弱い印象になりませんか?
いいえ、弱い印象になるわけではありません。 むしろ、相手を尊重しながら進めていることが伝わるため、信頼につながりやすくなります。 言い切る強さよりも、相手に合った形で伝える力のほうが、長く信頼される講師には大切です。
抽象的な表現を減らしたら、スピ系らしさがなくなりませんか?
なくなりません。抽象的な表現を消す必要はなく、具体的な説明を添えるだけで十分です。 感覚的な言葉と具体的な言葉の両方があることで、より多くの人に届きやすくなります。
相手をくくらないようにすると、説明がぼやけませんか?
ぼやけるのではなく、余白が生まれます。 その余白があることで、相手自身の感覚や背景が出てきやすくなります。 一方的に説明しきるより、相手と一緒に確かめながら進めたほうが、結果として深い理解につながります。
自分の癖を見直しても、また元に戻ってしまいそうです
それは自然なことです。長く使ってきた伝え方は、すぐには変わりません。 だからこそ、毎回完璧を目指すのではなく、ひとつずつ気づいて整えることが大切です。 発信前やセッション後に少し振り返るだけでも、少しずつ変化していきます。