
90分講座スクリプト完全版とQ&A台本:答えられないを防ぐ実装【Day3】
Day1で課題を可視化し、Day2で骨組み(逆向き設計)を作りました。
本稿では、今日そのまま現場で使える実装一式を提供します。
スクールでは教えられないレベルの人が教えて、できない人しか育たない——そんな悪循環を進行・資料・評価の合わせ技で止めましょう。
90分スクリプト(導入→デモ→演習→振り返り)
※時間は目安。各ブロックの最後にチェックポイント(CP)を必ず入れてください。
時間 | 目的 | 進行スクリプト(例) | CP(評価) |
---|---|---|---|
0-10分 | 目的・基準・場の安全 |
講師:「本日の目標は“○○を3分で説明できる”です。評価は口頭説明+チェックリスト。ルールは“間違い歓迎・時間の尊重・匿名質問”。」 全員:ラウンドロビンで一言自己紹介(30秒)。 |
ルール合意の挙手/匿名質問フォーム稼働 |
10-25分 | 概念の定義と反例 |
講師:定義→具体例→反例→注意点を板書。「反例が言えると境界が見えます。」 問い:反例を1つ挙げ、なぜ反例か1文で。 |
反例ワークの共有(2,3名指名) |
25-40分 | デモ(手順の視覚化) |
講師:手順を番号で示しながら実演。各ステップで「目的・観察ポイント・よくある誤解」を言語化。 受講生:チェックリストで観察→ペアで言い換え。 |
3ステップを言い換えできるか個別確認 |
40-60分 | 演習1(説明) |
受講生:ペアで3分説明→交代。相互フィードバック。 講師:巡回し、事実→気づき→次の一手の順で短いFB。 |
口頭説明の録音/チェック項目◯×提出 |
60-75分 | 演習2(事例分類) |
小グループ:ケースA/B/Cをルーブリックで分類→根拠を付箋に。 講師:分類の相違を可視化し、判断基準の言語化を支援。 |
分類表の回収/根拠の共有 |
75-85分 | よくある質問への対応 |
講師:匿名質問から2件を選び、用語定義→具体例→反例→手順→注意点で回答。 ※即答できない場合の台本はQ&A台本を参照。 |
満足度ミニ投票/追加質問の収集 |
85-90分 | 振り返りと約束 |
講師:「今日できるようになったことを1文で。次回までに1回実践し、録音/記録を残してください。」 |
Exit Ticket(1文メモ)提出 |
進行に自信がないときほど、問いと評価の位置を先に固定しましょう。内容は後からでも追いつきます。
配布資料構成と版管理
配布資料(例)
- スライド:定義/反例/注意点(A4横)
- チェックリスト:デモ観察用(10項目)
- ルーブリック:初級/中級/上級(1枚)
- 分類表:ケースA/B/C+根拠欄
- Exit Ticket:1文ふりかえりカード
- 匿名質問フォームQR(紙/スライド)
版管理のコツ
- ファイル命名:2025-10-02_day3_v1.2_slide.pdf
- 変更履歴:更新理由・ページ番号・影響範囲を1行で記録
- 配布用と講師用を分ける(講師用は台本・想定質問付き)
- 質問ログ→次回スライドへ反映(FAQは資産)
理解チェックと即時フィードバック
理解チェックはテストではなく、誤解を早期に発見して修正する仕組みです。
使えるチェック4種
- ミニ口頭説明(30〜60秒):3文で要点を言う。録音可。
- 反例提示:1つ挙げて理由を1文で。
- 観察チェックリスト:デモ中に◯×で記録。
- Exit Ticket:「今日できるようになったこと/まだ疑問の点」を各1文。
即時フィードバックの型
- 事実→意味→次の一手:「いま〇〇と言えた(事実)。つまり△△が理解できています(意味)。次回は□□も入れてみましょう(次の一手)。」
- 伸びの可視化:開始時と比べて良くなった点を1つ言語化。
- 誤解の修正:用語の再定義→反例→正しい手順の順で短く。
Q&A誘導台本(曖昧→具体化)
「質問できない」「答えられない」を避けるための、言い換え・具体化・保留の透明化の台本です。
状況に合わせて使い分けてください。
1) 曖昧質問→具体化
受講生 | 講師の誘導例 |
---|---|
「なんとなく不安です」 | 「いつ/どこ/誰との場面で感じやすいですか?1つだけ具体例をください。」 |
「うまくできません」 | 「どの手順番号で止まりましたか?そこで何が見えた/聞こえたか教えてください。」 |
「結局どれが本物ですか?」 | 「ラベルより成果で見ます。3分で説明してみましょう。私がルーブリックで一緒に確認します。」 |
2) 定義の揺れを整える
講師:「いま使った用語を1文で定義してみましょう。
私の定義は——(定義→反例→注意点)。」
3) 二択化で前進
講師:「AとBのどちらに近いですか?理由を1文で。」
4) 実演依頼(行動で確かめる)
講師:「10秒で操作を見せてください。こちらで観察チェックします。」
5) 即答できない時の透明な保留
- 「いま根拠が不足しています。定義→資料→実演で検証し、次回までに回答します。記録にも残します。」
- 「医療・健康判断に関わるため、この講座の範囲外です。専門家の領域でご相談ください。」
- 「倫理上、個人情報に触れるため詳細は扱いません。一般化して解説します。」
6) 難しい場面の対応
- 独占的に話す受講生:「次は他の方に回します。最後にまた戻りますね。」
- 反論が強い:「反例として価値があります。ルーブリックの観点で1分で要点を。」
- 沈黙:「30秒個人で書いてから、ペアで共有→全体に戻します。」
ルーブリック(初級/中級/上級)
観点 | 初級 | 中級 | 上級 |
---|---|---|---|
用語定義 | 曖昧な表現が多い/反例が挙げられない | 1文定義+反例1つを提示できる | 文脈差(境界条件)まで言語化できる |
手順説明 | 順序立っていない/抜け漏れがある | 番号で説明し、注意点を1つ添えられる | 目的・観察ポイント・代替案まで示せる |
実演 | 手順を見せられない/時間超過 | 基本手順を時間内に再現できる | 例外処理・トラブル時の回復まで示せる |
質問対応 | 主観的・長い/結論が曖昧 | 定義→例→反例→手順で簡潔に回答 | 問いを再設計し、受講生に説明させて確認できる |
倫理・透明性 | 限界の明示がない | 範囲外は保留し、根拠と次の手を明確に | 再現性のある記録と公開可能な成果で信頼を築く |
まとめ
「わからないまま、聞けないまま」を残さない鍵は、時間割に問いと評価を埋め込むことです。
進行・資料・理解チェック・Q&A台本・ルーブリックが揃えば、教えられない→できないが続く悪循環は止まります。
自分のテーマ用に微調整したい場合は、以下からご相談ください。
次回Day4では、KPIとABテストで継続的に改善する方法を解説します。