
はじめに
Day1では、お金業務を抱え込むコストと、外注によるリターンを整理しました。
今日はさらに一歩進み、あなたの現場に合わせて
「何を任せ、何を自分で持つか」を具体化します。
お金にまつわることが苦手でできないのなら、無理に抱え込まず
アウトソーシングする方が良い
——ただし、線引きと権限の設計が前提です。
本記事は一般情報であり、税務・法務の最終判断は専門家(税理士・弁護士・FP)にご相談ください。
1. お金業務の全体マップ
主要タスク群
- 請求:見積・請求書発行・送付・督促
- 入金:入金照合・未収フォロー
- 経費:領収書回収・仕分・証憑保管
- 記帳:クラウド会計入力・月次試算表
- 税務:年末調整(該当時)・確定申告サポート
- 契約:NDA/基本契約/個別契約の管理
- ツール:請求/会計/ストレージ/パスワード管理
よくあるボトルネック
- 請求送付の遅延→入金遅れ→キャッシュ不安
- レシート後回し→月末一括入力→ミス増加
- アカウント共有の雑さ→セキュリティリスク
後回しは“波”を乱します。仕組みで先に整えるのが近道です。
2. “任せる/共同/自分で”の線引きマトリクス
判断基準は「価値への影響」「専門性」「リスク」「個人性」の4軸です。下表は一般的な目安です。
| タスク | 推奨区分 | 理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 請求書発行・送付 | 任せる | 手順化しやすい・定期性高い | テンプレ統一、送信前ダブルチェック |
| 入金照合・未収フォロー | 任せる | SOPで自動化/半自動化可 | 督促文面は雛形+最終送信は本人承認 |
| 領収書回収・仕分 | 任せる | ルール化で品質安定 | 科目ルール表を共有 |
| クラウド会計への記帳 | 任せる(または共同) | 専門性・分量が大きい | 仕訳基準の指示書を作成 |
| 月次レポート作成 | 共同 | 数値解釈は本人の意思決定に直結 | フォーマット固定+ミーティング |
| 税務申告(確定申告) | 任せる(専門家) | 法令遵守・リスク対応 | 必要資料の期日提出は本人が責任 |
| 価格改定・返金可否決定 | 自分で | ブランド・信頼に直結 | 外注は材料整理まで |
| 重要告知文面の最終承認 | 自分で | メッセージの“温度”を守る | 外注はドラフト作成まで |
“自分で”は「手作業する」の意味ではなく、最終判断・承認の責任を持つという意味です。
3. 線引きテンプレ
下記のサンプルを自分用にコピーして使ってください。
| カテゴリ | タスク | 区分(任せる/共同/自分) | 品質基準(Doneの定義) | SLA/期限 |
|---|---|---|---|---|
| 請求 | 請求書発行・送付 | 任せる | テンプレNo.01に沿い相手名/金額/期日一致 | 毎週火曜12:00まで |
| 入金 | 入金照合 | 任せる | 入金一覧と請求台帳の差異0 | 週次レポート金曜17:00 |
| 経費 | 領収書回収・仕分 | 任せる | 証憑100%回収、科目ルールに一致 | 翌月3営業日内 |
| 記帳 | 会計入力 | 共同 | エラー率1%未満、承認フロー通過 | 翌月5営業日内 |
| 税務 | 確定申告 | 任せる(専門家) | 必要書類一式提出済・確認MTG完了 | 税理士指定期日 |
| 契約 | NDA/基本契約管理 | 共同 | 最新版のみ稼働、失効なし | 四半期レビュー |
4. 役割と権限:最小権限の考え方
外注時の基本は最小権限(Least Privilege)。閲覧・編集・送金を分け、送金だけは本人が実行する形を推奨します。
| タスク | あなた | オンライン秘書 | 記帳代行/税理士 | 権限の例 |
|---|---|---|---|---|
| 請求書発行 | A(承認) | R(実行) | C(相談) | 請求ツール:編集可/送信は要承認 |
| 入金照合 | A | R | C | 入金CSVの閲覧のみ、銀行は閲覧権限 |
| 経費仕分 | A | R | C | 会計:入力可/承認はあなた |
| 月次レポート | A/R | R | C | ダッシュボード閲覧可 |
| 確定申告 | A | C | R | 会計データ共有、提出は税理士 |
- 共有はパスワードマネージャで(直送付は避ける)
- 2段階認証のバックアップコードは金庫保管
- アクセスログは月次で確認
5. 運用KPIとレビュー頻度
線引き後は、見える化と継続レビューで品質を保ちます。
| KPI | 目標値の目安 | レビュー頻度 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 請求遅延率 | 0% | 週次 | 締切前自動リマインド |
| 入金未照合件数 | 週末時点で0件 | 週次 | 差異は即共有 |
| 仕訳エラー率 | <1% | 月次 | サンプル監査 |
| 証憑回収率 | 100% | 月次 | 不足は翌月3営業日内に補完 |
| 月次締め日遵守 | 100% | 月次 | ダッシュボードで可視化 |
6. 小さなワーク提出(習慣化の第一歩)
一貫性を育てるための“超ミニ”ワークです。10分でOK。
- 今月のタスクから、任せたい3つと自分で持つ3つを選ぶ。
- 上のテンプレ(抜粋)にSLAと品質基準を1行ずつ追記。
- 結果のスクリーンショットをLINEに送信(後日フィードバック)。
提出することで「やる」と決めた自分との約束を守れます。小さく始めて、続けましょう。
FAQ
Q. はじめから全部任せても大丈夫?
A. 段階移行が安全です。まずは請求・入金照合など定型から。判断が必要な領域は共同→慣れたら外注拡張でもOK。
Q. 情報共有が怖い…
A. 最小権限・NDA・2段階認証・ログ監査。これらの仕組みが前提です。送金は分離しましょう。
Q. 予算感は?
A. ライト運用(5〜15時間/月)で1.5〜4万円が一つの目安。記帳量や税理士の関与で変動します。
まとめ:線引きが、安心と余白をつくる
「任せる/共同/自分で」の3分類と最小権限の設計ができれば、外注は怖くありません。お金が苦手なら、できない部分は 適切にアウトソーシングする方が良い。今日決めた線引きは、あなたの本業の集中力と波を守る土台になります。 次回Day3は、求人→選定→契約→引継ぎの実装手順へ。