
Day4:KPI・記録・改善プロトコル
Day4は最適化。測る → 見直す → 改善を回すために、KPI、記録、ダッシュボード、A/Bテスト、小規模統計の読み方を一気に整えます。数字は“評価”ではなく“対話の材料”。安心と質を高める羅針盤にしましょう。
目次
必須KPIセットと定義
KPI | 定義 | 式 | 測定タイミング | 目安 |
---|---|---|---|---|
満足度 | 5段階平均(Session Rating等) | 合計点/N | 終了直後 | 4.5以上 |
継続率 | 次回予約をした割合 | 次回予約数/セッション数 | 終了直後 | 55%+ |
紹介率 | 紹介経由の新規割合 | 紹介新規/全新規 | 月次 | 15%+ |
キャンセル率 | 前日以降のキャンセル+無断欠席 | (前日以降キャンセル+No-show)/予約数 | 月次 | <5% |
準備時間 | 1回あたり準備に要した時間 | 合計準備時間/セッション数 | 週次 | 45分→30分 |
面談メモとプライバシー(Pマスク)
記録は“将来の自分”への手紙。最小限で、しかし再現可能に残します。Pマスク(個人特定情報の匿名化)を徹底しましょう。
項目 | 記入例 | 注意 |
---|---|---|
目的 | 整理/気づき/次の一歩 | 当日の最終合意を記載 |
要点 | 事実3点・感情2語・意味づけ1行 | 評価語は控える |
介入 | NVC/GROW/提案A・B | 過度な助言は避ける |
次の一歩 | 家庭の練習×1(所要5分) | 安全・小さく・可視化 |
機微情報 | 固有名はイニシャル | 第三者共有禁止 |
保管 保存期間(例:6か月)を定め、アクセス権限を最小化。削除依頼の窓口を明示。
ダッシュボード雛形
まずはスプレッドシートで十分。下記の最小セットから始め、必要に応じて拡張します。
月 | セッション数 | 満足度 | 継続率 | 紹介率 | キャンセル率 | 平均準備時間 |
---|---|---|---|---|---|---|
4月 | 42 | 4.4 | 48% | 11% | 6.1% | 45分 |
5月 | 47 | 4.5 | 52% | 12% | 5.0% | 41分 |
6月 | 45 | 4.6 | 57% | 14% | 4.3% | 38分 |
7月 | 51 | 4.7 | 61% | 16% | 3.9% | 34分 |
A/Bテスト設計:導線・文面・価格表示
“どれが効いたか”を見極める最小の実験設計です。同時に変えるのは1項目が原則。
対象 | 仮説 | A | B | KPI | 期間/N |
---|---|---|---|---|---|
予約導線 | 導線の段数を減らすと予約率↑ | 3クリック | 1クリック(直リンク) | 予約完了率 | 2週間/各50 |
案内文 | 冒頭で範囲と安心を宣言するとキャンセル↓ | 従来文 | 範囲・安心の一文追加 | キャンセル率 | 4週間/各80 |
価格表示 | 税込・所要・返金規定の明示で迷い↓ | 価格のみ | 価格+所要+規定 | 離脱率 | 3週間/各100 |
小規模データの読み方(信頼区間・バイアス)
比例(率)の95%信頼区間(近似)
p = 成功率, n = 試行数 95%CI ≈ p ± 1.96 * √( p(1−p) / n ) 例)継続率 p=0.57, n=45 → 95%CI ≈ 0.57 ± 0.145(= [0.425, 0.715])
平均の95%信頼区間(小標本)
ȳ = 平均, s = 標準偏差, n = 件数, t* = t(0.975, n−1) 95%CI = ȳ ± t* * s/√n
よくあるバイアス
- 回答者バイアス:満足度は高めに出がち→匿名・1問・即時で。
- 季節性:繁忙/閑散で予約・キャンセルが変動→月次で移動平均。
- 実験漏れ:AとBの対象が混ざる→固定のルールで交互割付。
ケース:継続率+17ptの改善例
Day3の「統合パート」を導入し、終盤15分で“選択肢→本人選択→家庭の練習×1”を徹底した結果のサンプルです(置き換え推奨)。
期間 | 継続率 | N | 95%CI(近似) |
---|---|---|---|
導入前(4–5月) | 48% | 89 | [0.37, 0.59] |
導入後(6–7月) | 65% | 96 | [0.55, 0.75] |
まとめと次のステップ
今日整えたのは、(1) KPIの定義を共通言語に、(2) 面談メモとPマスクで記録を安全に、(3) ダッシュボードで“見える化”、(4) A/Bテストで原因を切り分け、(5) 小規模統計の基本で過度な確信を避ける、の5点です。まずは今月のデータを雛形に入力し、1つだけA/Bテストを始めましょう。
次回(Day5)は「統合:長期関係とビジネス設計(FAQつき)」。紹介プログラムとコミュニティ、価格改定まで一貫化します。
FAQ
- Q. 何から測れば良い?
- A. 満足度・継続率・キャンセル率の3点で十分。慣れたら紹介率と準備時間を追加。
- Q. Nが小さくて結論が出せない
- A. 期間を延ばすか、2サイクル連続で同方向の結果が出るかを確認します。
- Q. ネガティブな数値が怖い
- A. 数字は評価ではなく“材料”。要因を言語化できれば改善の第一歩です。