
クライアントだけが満たされる関係、自分だけが満たされる関係、その違いとは?
Day1では、 「クライアントとかかわる中で、自分はどんな瞬間に幸せを感じるのか」 を考えました。
Day2では、 クライアントの幸せと講師自身の幸せを完全に分けて考えすぎると、 講師が必要以上に責任を背負ったり、 自分を後回しにしたりすることがあると整理しました。
では、実際のクライアントとの関係では、 どのような違いが出てくるのでしょうか。
たとえば、 クライアントは満足しているけれど、講師は疲れ切っている関係。
反対に、 講師は必要とされて満足しているけれど、クライアントが自分で決めにくくなっている関係。
そして、 クライアントの意思も、講師自身の時間や気持ちも尊重されている関係。
同じように「クライアントとかかわっている」ように見えても、 その中身には大きな違いがあります。
Day3では、説明用の仮想ケースを使いながら、 3つの関係の違いを具体的に見ていきます。
誰かを批判するためではなく、 自分は今、どのような関係をつくっているのかを振り返るため に読んでみてください。
この記事の要約
クライアントとの関係は、 「相手が満足しているか」だけでは判断できません。
クライアントだけが満たされ、講師が無理を続ける関係では、 長く続けることが難しくなる場合があります。
一方で、講師が必要とされることを重視しすぎると、 クライアント自身が考えたり選んだりする機会を小さくしてしまう可能性があります。
目指したいのは、 どちらか一方が満たされる関係ではなく、 クライアントの意思と、講師自身の時間・役割・できる範囲の両方が尊重される関係 です。
目次
- 関係のよし悪しは「喜ばれたか」だけでは分からない
- 仮想ケース1:クライアントは満足しているけれど、講師が疲れている
- 仮想ケース2:講師は必要とされているけれど、クライアントが自分で決めにくい
- 仮想ケース3:クライアントと講師の双方が尊重されている
- 3つのケースを比べると何が違うのか
- 「一緒に幸せを感じる」とはどういうことか
- クライアントの変化を自分の成果にしすぎない
- 講師自身の満足をクライアントへ背負わせない
- 今日の実践ワーク
関係のよし悪しは「喜ばれたか」だけでは分からない
クライアントから、
「ありがとうございました」
「話せてよかったです」
「またお願いしたいです」
と言われるとうれしいものです。
講師として活動していれば、 クライアントに喜んでもらえることを大切にするのは自然でしょう。
ただし、 クライアントがその場で満足しているからといって、 必ずしも双方にとって無理のない関係になっているとは限りません。
たとえば、 予定していた60分を毎回30分以上延長しているとします。
クライアントは、 「こんなに親身になってくれる」 と喜んでいるかもしれません。
けれど講師は、 次の予定に遅れたり、 終わったあとにぐったり疲れたりしているかもしれません。
反対に、 クライアントからいつも頼られているため、 講師側は 「私は必要とされている」 と満足しているかもしれません。
しかし、クライアント自身は、 何かを決めるたびに講師へ確認しないと不安になっているかもしれません。
このように、 片方の満足だけを見ていると、関係全体が見えにくくなることがあります。
そこで、ここからは3つの仮想ケースを見ていきましょう。
仮想ケース1:クライアントは満足しているけれど、講師が疲れている
これは説明のための仮想ケースです。 実在の人物や事例ではありません。
相談時間をいつも延長してしまうAさん
Aさんは、スピリチュアル系の個人セッションを提供しています。
もともと人の話を聞くことが好きで、 「せっかく来てくれた人には、できる限り満足して帰ってほしい」 と考えています。
セッション時間は60分です。
しかし、終了時間が近づいたところでクライアントが新しい悩みを話し始めると、 Aさんは話を止めることができません。
「ここで終わったら冷たいと思われるかもしれない」
「せっかく話してくれたのだから、最後まで聞かなければ」
と思い、 毎回20分、30分と延長します。
クライアントからは、
「こんなに丁寧に聞いてもらえてうれしいです」
と言われています。
その言葉を聞くと、 Aさんもうれしくなります。
ところが、 セッションが終わるころには、 いつも強い疲れを感じています。
次の予定がある日は、 食事を取る時間がなくなることもあります。
夜になっても相談内容が頭から離れず、 「もっとできることはなかっただろうか」 と考え続けることもあります。
このケースで起きていること
Aさんは、クライアントを大切にしようとしています。
そこには、 「役に立ちたい」 という気持ちがあります。
しかし、結果として、 クライアントの満足のために、自分の時間や体力を継続的に差し出している状態 になっています。
ここで大切なのは、 「延長することが悪い」 と単純に決めることではありません。
たとえば、例外的な事情があり、 Aさん自身も納得したうえで少し延長するなら、 問題を感じないこともあるでしょう。
見直したいのは、
- 断りたいのに断れない
- 疲れているのに続ける
- 相手に嫌われることが怖くて対応する
- 毎回同じように予定時間を超える
- 自分の生活に影響が出ている
といった状態です。
クライアントが喜んでいたとしても、 講師側に無理が積み重なっているのであれば、 その関係は一度見直してよいでしょう。
Aさんが見直せること
たとえばAさんは、 終了10分前になったら、
「今日はあと10分ほどなので、ここから何を一番整理しておきたいですか?」
と確認することができます。
時間内で扱いきれないテーマが出た場合は、
「その話は大切なので、急いでまとめるより、必要であれば次回ゆっくり扱いましょう」
と伝える方法もあります。
時間を守ることは、 相手を大切にしていないという意味ではありません。
自分が提供できる範囲を明確にすることも、安定した関係をつくるための一部 です。
仮想ケース2:講師は必要とされているけれど、クライアントが自分で決めにくい
次も説明用の仮想ケースです。
答えを求められるたびに教えてしまうBさん
Bさんは、 リーディングを中心としたセッションを提供しています。
クライアントから、
「転職したほうがいいですか?」
「この人とは別れたほうがいいですか?」
「この講座を受けたほうがいいですか?」
と相談されることがあります。
Bさんは、 頼られることにやりがいを感じています。
「私を信頼してくれている」
と思えるからです。
そのため、 質問されると、
「こちらを選んだほうがいいと思います」
「今は動かないほうがいいでしょう」
と、はっきり答えることが増えていきました。
クライアントも最初は、 「答えを教えてもらえるので安心する」 と感じています。
ところが少しずつ、 小さなことまでBさんに確認するようになってきました。
何か迷うたびに連絡をします。
自分の考えより、 Bさんの言葉を先に聞きたくなります。
Bさんの側も、 頻繁に相談されることで、 「私は頼られている」 という満足を感じています。
このケースで考えたいこと
このケースでは、 講師とクライアントの両方が、 短い期間では安心や満足を感じているかもしれません。
しかし、 長い目で見ると、 ひとつ問いかけたいことがあります。
クライアント自身が、自分で考え、自分で選ぶ機会は増えているでしょうか。
スピリチュアルな考え方やリーディングを、 自分を見つめるための参考として利用することはできます。
ただし、それによって重要な人生の選択をすべて他者へ任せるようになってしまえば、 本人の意思が見えにくくなることがあります。
講師が答えを持っているように振る舞い続けることで、 クライアントが 「自分では決められない」 と思うようになる場合もあります。
そして講師自身も、 「頼られること」が大きな喜びになりすぎると、 クライアントが自立して相談回数が減ることを、 素直に喜びにくくなるかもしれません。
Bさんが見直せること
Bさんがすべての答えを出すのではなく、 クライアント自身へ問いを返す方法があります。
たとえば、
- 「あなた自身は、今どうしたいと感じていますか?」
- 「どちらを選んだときに、より納得できそうですか?」
- 「いま一番大切にしたいことは何でしょう?」
- 「不安がなかったとしたら、どちらを選びたいですか?」
- 「私の言葉を聞く前は、どう考えていましたか?」
といった問いかけです。
もちろん、 答えを急がせる必要はありません。
大切なのは、 講師の答えによって決めてもらうのではなく、本人が自分の考えに戻れるようにすること です。
仮想ケース3:クライアントと講師の双方が尊重されている
最後も説明用の仮想ケースです。
「一緒に整理する」ことを大切にするCさん
Cさんは、 自己理解をテーマにした個人セッションを提供しています。
クライアントが悩みを話すとき、 Cさんはすぐに答えを出そうとはしません。
まず、
「今、一番引っかかっていることは何ですか?」
「本当はどうしたいと思っていますか?」
と聞きます。
必要に応じて、 Cさん自身の考えや、 セッションで使っているスピリチュアルな見方についても伝えます。
ただし、
「これはひとつの見方なので、あなた自身がどう感じるかを大事にしてください」
と説明します。
セッション時間も、 原則として決められた範囲で行います。
終了時間が近づくと、
「今日はここまでの中で、何を持ち帰りたいですか?」
と確認します。
もし専門外の相談が出た場合には、 無理に答えようとしません。
医療や心理など専門的な支援が必要と思われる内容については、 必要に応じて適切な専門家へ相談することも選択肢として伝えます。
クライアントが以前より自分で決められるようになり、 相談回数が減ったとき、 Cさんは少し寂しさを感じることもあります。
それでも、
「自分で考えられるようになったのなら、それはうれしい変化だな」
と受け止めています。
このケースで大切にされていること
Cさんは、 クライアントだけを優先しているわけではありません。
同時に、 自分だけの満足を優先しているわけでもありません。
クライアントには、 自分の人生について考え、選ぶ余地があります。
Cさん自身にも、 提供できる時間や役割の範囲があります。
どちらかが我慢し続けるのではなく、 それぞれが自分の立場と役割を持ったまま関わっている ことが特徴です。
3つのケースを比べると何が違うのか
| 関係 | クライアント | 講師 | 起こりやすいこと |
|---|---|---|---|
| クライアントだけが満たされる関係 | 丁寧に対応してもらえて満足する | 無理や疲れを抱えやすい | 講師が自分を後回しにしやすい |
| 講師だけが満たされやすい関係 | 講師へ答えを求めやすくなる | 必要とされることで満足する | クライアント自身が考える機会が減ることがある |
| 双方が尊重される関係 | 自分で考え、選ぶ余白がある | 役割や時間を守りながら関われる | それぞれの意思を尊重しやすい |
もちろん、 現実の人間関係はこのようにきれいに3つへ分かれるわけではありません。
あるときはAさんのようになり、 別の場面ではBさんのようになることもあります。
また、 忙しい時期や自信を失っているときなど、 状況によって関わり方が変わることもあります。
大切なのは、 自分を 「私は間違っている」 と評価することではありません。
今、自分とクライアントの間では何が起きているのかを見られること です。
「一緒に幸せを感じる」とはどういうことか
このシリーズで考えている大きなテーマのひとつが、
「クライアントが幸せになることと、自分が幸せを感じることは両立するのか」
という問いです。
ここまでの内容から考えると、 答えは 「同じ幸せを持たなければならないわけではない」 ということになります。
クライアントにとっての幸せと、 講師にとっての幸せは、 それぞれ違っていて構いません。
たとえば、 クライアントは、 「自分で決められたこと」 に喜びを感じるかもしれません。
講師は、 その姿を見て、 「この人が自分の答えを見つける時間に関われてよかった」 と感じるかもしれません。
幸せの内容は違っています。
けれど、 その場で双方に無理がなく、 それぞれに意味のある時間になっている。
このような状態も、 クライアントとともに幸せを感じる関係 のひとつと考えることができます。
同じ気持ちにならなくてもいい
「一緒に幸せを感じる」 という言葉から、 クライアントが喜んでいるときは、 講師も同じように喜ばなければならないと考える必要はありません。
講師とクライアントは別の人です。
感じ方が違うことは自然です。
たとえば、 クライアントが 「会社を辞めることに決めました」 と晴れやかな表情で話したとします。
講師自身は、 その選択が正しいかどうかを判断できないかもしれません。
それでも、
「自分で考えたうえで決めたのですね」
と、その人が考えて選んだこと自体を尊重することはできます。
講師がクライアントと同じ感情になることよりも、 相手の気持ちを相手のものとして大切にできること のほうが重要な場面もあります。
クライアントの変化を自分の成果にしすぎない
クライアントに良い変化があったとき、 講師としてうれしく感じることがあります。
それは自然なことです。
ただし、
「私が変えた」
「私のおかげでこの人は幸せになった」
という感覚が強くなりすぎると、 少し注意が必要です。
クライアントが何かを変えた背景には、 さまざまなものがあります。
本人が長く考えてきたこと。
家族や友人との会話。
仕事で起きたこと。
本や動画から得た情報。
日々の経験。
そして、 セッションで話したこと。
講師との関わりがひとつのきっかけになることはあっても、 その人の変化のすべてを講師だけの成果として説明することはできません。
むしろ、
「この人が自分で考え、自分で選んだ結果の一部に関われた」
くらいに考えるほうが、 クライアント自身の力を尊重しやすくなります。
「うまくいったら私のおかげ、うまくいかなかったら私の責任」になっていないか
クライアントの変化を自分の成果として強く受け止めるようになると、 反対側にも影響が出ます。
つまり、 クライアントが思うように変化しなかったときには、
「私が悪かった」
「私に力がなかった」
と考えやすくなるということです。
すると、 良い変化があれば自分の成果。
変化がなければ自分の責任。
という形になり、 講師自身が非常に大きなものを背負うことになります。
けれど、 講師ができるのは、 クライアントの人生を直接変えることではありません。
できるのは、
- 話を聞くこと
- 考える時間をつくること
- 自分が持っている知識や考え方を伝えること
- 別の視点を示すこと
- 本人が気づいたことを整理すること
- できる範囲で支えること
などです。
その先の人生をどう歩くかは、 クライアント自身の領域です。
この区別を持っていることは、 冷たいことではありません。
むしろ、 クライアントを「自分の力で人生を選べる人」として見ること につながります。
講師自身の満足をクライアントへ背負わせない
一方で、 講師自身が幸せを感じることも大切です。
ただし、 講師自身の満足を、 クライアントが背負う必要はありません。
たとえば、
「先生のおかげですと言ってほしい」
「ずっと私を必要としてほしい」
「私の言った通りに行動してほしい」
「変化してくれないと、自分の価値がないように感じる」
という状態が強くなると、 クライアントが講師の安心や自信を支える役割を持つことになります。
それでは、 クライアント自身が自由に考えにくくなる場合があります。
たとえば、 本当は講師と違う意見を持っていても、
「先生をがっかりさせたくない」
と思って言えないかもしれません。
本当はもうセッションが必要ないと感じていても、
「断ったら悪いかな」
と思って続けるかもしれません。
講師が自分の喜びを持つことは問題ではありません。
大切なのは、 その喜びを満たす責任をクライアントに持たせないこと です。
講師として感じる幸せを、自分の言葉で説明できますか?
ここで、 Day1の問いにもう一度戻ってみましょう。
あなたは、 クライアントとかかわる中で、 どんなときに幸せを感じるでしょうか。
たとえば、
- 安心して本音を話してもらえたとき
- 相手が自分なりの答えを見つけたとき
- 何かを決める勇気が出たと話してくれたとき
- 自分自身を少し大切にできるようになったとき
- 講師へ頼らなくても自分で考えられるようになったとき
- 一緒に考える時間そのものに意味を感じたとき
- 自分も無理なく自然体でかかわれたとき
こうして具体的にしていくと、 自分が求めているのが、 「必要とされること」なのか、 「人が自分らしくなっていくこと」なのか、 少しずつ違いが見えてきます。
もちろん、 ひとつだけに絞る必要はありません。
必要とされるとうれしい。
感謝されるとうれしい。
変化を見られるとうれしい。
自分で進めるようになるとうれしい。
さまざまな気持ちがあって構いません。
重要なのは、 自分の中にある気持ちを知らないまま、クライアントとの関係へ持ち込まないこと です。
双方が幸せであることは「いつも気分がいい」という意味ではない
ここで誤解しないでおきたいことがあります。
クライアントと講師の双方が尊重されているからといって、 毎回気分よく終われるとは限りません。
クライアントが、 自分にとって少し耳の痛いことに気づくこともあります。
講師が、 「それは私が対応できる範囲ではありません」 と伝えなければならない場面もあります。
予約のルールを守ってもらうために、 断ることもあるでしょう。
クライアントが、 講師の考えとは違う道を選ぶこともあります。
その瞬間は、 お互いに少し残念だったり、 寂しかったりするかもしれません。
だから、 ここでいう 「双方にとって幸せな関係」は、
いつでも気分がよく、何の違和感も起きない関係
という意味ではありません。
それよりも、
- 自分の気持ちを無視しなくてよい
- 相手の気持ちも尊重される
- 無理なことには無理と言える
- 違う考えを持つことが許される
- クライアントが自分の意思で選べる
- 講師自身も自分の生活を大切にできる
といった関係に近いものです。
「いい講師でいなければ」が関係を苦しくすることもある
スピリチュアル系の活動をしていると、 自分の中に 「いい講師像」 ができることがあります。
たとえば、
- いつもやさしくなければいけない
- どんな相談も受け止めなければいけない
- 困っている人を断ってはいけない
- いつでも穏やかでいなければいけない
- クライアントをがっかりさせてはいけない
- 自分より相手を優先しなければいけない
といった考えです。
もちろん、 丁寧な対応や思いやりは大切です。
しかし、 「いい講師でなければ」 という気持ちが強くなりすぎると、 自分の限界を無視する理由になってしまうことがあります。
たとえば、 営業時間外の相談を断れない。
無料で追加対応を続ける。
苦手な相談も引き受ける。
自分が体調不良でも予定を変更できない。
こうした状態を続けることが、 本当にクライアントのためになるとは限りません。
講師も一人の人です。
できることと、 できないことがあります。
その範囲を知っていることも、 信頼関係をつくるためには大切です。
自分の幸せを守ることは、サービスを続けるためにも必要
講師として活動を続けていくためには、 クライアントの満足だけではなく、 自分自身が継続できる形になっているかを見る必要があります。
もし毎回、 セッションのあとに動けないほど疲れているなら、 何かを見直す必要があるかもしれません。
もしクライアントから連絡が来るたびに強い負担を感じるなら、 連絡ルールを考え直すこともできます。
もし相談内容が重すぎて、 自分の専門性では対応しきれないのであれば、 無理に抱える必要はありません。
自分を大切にすることは、 ただ楽をするという意味ではありません。
自分が安定して提供を続けられる状態をつくること でもあります。
クライアントのために良いものを提供したいのであれば、 提供する側が無理を重ねすぎないことも大切です。
クライアントの幸せを決めない
もうひとつ、 双方が尊重される関係で大切なのは、 講師がクライアントの幸せを決めないことです。
スピリチュアルな講師として、 自分なりの価値観や世界観を持つことはできます。
たとえば、
「もっと自分らしく生きてほしい」
「自分の感覚を大切にしてほしい」
「無理をしないで生きてほしい」
と考えることもあるでしょう。
ただし、 何がその人にとって幸せなのかは、 最終的には本人が決めるものです。
ある人は、 新しい仕事へ挑戦することを幸せと感じます。
別の人は、 今の生活を安定させることを幸せと感じます。
ある人は、 人間関係を広げることを望みます。
別の人は、 一人で静かに過ごす時間を大切にします。
講師が 「こうなれば幸せ」 という答えを持ちすぎると、 クライアントが本当に望んでいることが見えにくくなる場合があります。
だからこそ、
「私はこう考えるけれど、あなたはどう感じますか?」
という姿勢が大切です。
今日の実践ワーク
今日は、 これまでのクライアントとの関わりをひとつ思い出してみてください。
特定の個人情報を書き出す必要はありません。
名前などは書かず、 自分自身の関わり方だけを振り返ります。
ステップ1:ひとつの場面を思い出す
たとえば、
- 長時間話を聞いたとき
- クライアントから強く頼られたとき
- 相談回数が減ったとき
- クライアントが自分で答えを決めたとき
- 自分の提案とは違う選択をされたとき
などをひとつ選びます。
ステップ2:クライアント側を考える
そのとき、 クライアントにはどのような選択肢があったでしょうか。
本人が自由に考えられる余地はあったでしょうか。
講師である自分の期待を、 無意識に求めてはいなかったでしょうか。
ステップ3:自分側を考える
そのときの自分は、 無理をしていなかったでしょうか。
本当は断りたかったことはなかったでしょうか。
必要とされることで、 自分の価値を確かめようとしていなかったでしょうか。
反対に、 「この人が自分で決められたことがうれしい」 と感じた場面はなかったでしょうか。
ステップ4:これから大切にしたいことを書く
最後に、 次の文章を自分なりに完成させてみてください。
「私は、クライアントが____できる関係を大切にしたい。」
そして、
「私は講師として、____でいられる関係を大切にしたい。」
たとえば、
「私は、クライアントが自分で考えて選べる関係を大切にしたい。」
「私は講師として、無理をせず落ち着いて話を聞ける関係を大切にしたい。」
という形です。
答えに正解はありません。
自分が大切にしたい関係を、 少しずつ言葉にしていくことが目的です。
今日考えてみたい5つの質問
- 私は、クライアントが喜ぶことと、自分が無理をすることを混同していないでしょうか?
- クライアントが私を必要としなくなったとき、それをどのように感じるでしょうか?
- 私はクライアントへ答えを与えすぎていないでしょうか?
- クライアントが自分とは違う幸せを選ぶことを尊重できるでしょうか?
- 私自身が無理なく続けられる関係とは、どのような関係でしょうか?
ひとつずつ考えてみると、 自分がどのような関係をつくりやすいのかが見えてきます。
今日の実践ポイント
今日、一番覚えておきたいことは、 「どちらか一方だけが満たされる関係を目指さなくてよい」 ということです。
クライアントが自分の意思を大切にできる。
講師も自分の時間や体力を大切にできる。
クライアントは講師にすべてを預けなくてよい。
講師もクライアントの人生をすべて背負わなくてよい。
このように、 お互いがそれぞれの人生を持ったまま関われることが、 安心して続けられる関係につながります。
まとめ
- クライアントが満足していても、講師が無理を続けているなら関係を見直す余地がある
- 講師が必要とされることだけを喜びにすると、クライアントが自分で考える余白が小さくなることがある
- クライアントと講師の双方が尊重される関係では、それぞれの時間・意思・役割が大切にされる
- 一緒に幸せを感じるとは、同じ気持ちになることではなく、お互いに意味のある関わりを持てることでもある
- クライアントの良い変化を、すべて自分の成果だと考える必要はない
- 講師自身の安心や自信を満たす責任を、クライアントに背負わせないことが大切
- クライアント自身が何を幸せと感じるのかを尊重する
- 講師自身も無理なく続けられる関わり方を考えてよい
クライアントとの関係を考えるとき、 「相手を幸せにしなければ」 という考えだけで進むと、 講師自身が見えなくなることがあります。
反対に、 「必要とされたい」 という気持ちだけが強くなると、 クライアント自身の意思が見えにくくなる場合があります。
大切なのは、 どちらかを犠牲にすることではありません。
クライアントは、 自分の人生を考え、自分で選ぶことができる。
講師は、 自分のできる範囲を大切にしながら、その時間に関わることができる。
そして、 その関わりの中でクライアントに何か大切な気づきが生まれたとき、 講師自身も 「この時間に関われてよかった」 と感じる。
そんなふうに、それぞれが自分の人生を持ちながら、喜びが重なる瞬間をつくることも、講師としての幸せのひとつです。
よくある質問
クライアントに喜ばれるなら、多少自分が無理をしてもよいのではないでしょうか?
一時的に、自分が納得したうえで少し多く対応することもあるでしょう。 ただし、それが毎回続き、自分の生活や体力に負担が出ているのであれば、見直すことをおすすめします。 無理を続けることだけが、クライアントを大切にする方法ではありません。
頼られることに喜びを感じるのはよくないことですか?
頼られるとうれしいと感じること自体を否定する必要はありません。 大切なのは、その喜びのためにクライアントが自分へ依存し続けることを望む状態になっていないかを、ときどき振り返ることです。 クライアントが自分で考えられるようになったことも喜べると、より幅のある関わり方ができます。
クライアントへ具体的なアドバイスをしてはいけないのでしょうか?
具体的な情報や考え方を伝えること自体が問題なのではありません。 ただし、それを唯一の正解として押しつけたり、重要な人生の選択を講師が代わりに決めたりしないことが大切です。 「私はこう考えますが、あなた自身はどう感じますか」と本人の考えへ戻すこともできます。
クライアントが自分とは違う選択をすると、少し残念に感じます。問題でしょうか?
残念に感じること自体は、自然な感情のひとつです。 重要なのは、その感情があるからといって、相手の選択を変えさせようとしないことです。 自分の気持ちと、クライアントが決める権利を分けて考えることが大切です。
「双方が幸せな関係」なら、クライアントとの関係はいつも楽になりますか?
必ずしもそうではありません。 境界を伝える場面や、意見が違う場面、セッションを終了する場面などでは、少し気まずさや寂しさを感じることもあります。 双方が尊重される関係とは、いつも楽しい関係というよりも、それぞれが自分の気持ちや意思を持ったまま関われる関係です。
次回について
Day3では、 具体的な仮想ケースを通して、
クライアントだけが満たされる関係
講師だけが満たされやすい関係
クライアントと講師の双方が尊重される関係
の違いを考えました。
ここまで読んで、
「では、実際にどうすれば、自分も相手も大切にできるのだろう」
と思った方もいるかもしれません。
考え方が分かっていても、 実際のセッション中には、 つい相手へ合わせすぎたり、 逆に答えを与えすぎたりすることもあります。
そこでDay4では、 クライアントとの関係を整えるために、日々の活動ですぐに確認できる実践方法 を扱います。
セッション前、セッション中、セッション後の3つの場面に分けて、 自分の状態とクライアントとの距離感を確認する方法を具体的に整理していきます。
自分に合ったクライアントとの関わり方を整理したい方へ
「クライアントを大切にしたいけれど、どこまで対応したらよいのか分からない」
「必要とされるとうれしいけれど、少し疲れている」
「答えを教えることと、本人に考えてもらうことのバランスが難しい」
「自分が講師として何を幸せと感じているのか、まだうまく言葉にできない」
このような状態であれば、 一度、自分の中にある 「理想の講師像」 「クライアントに求めていること」 「本当に大切にしたい関わり方」 を分けて整理してみることが役立ちます。
一人で考えていると、 自分では当たり前になっている考えに気づきにくいことがあります。
誰かと話しながら整理することで、 自分が無理をしているところや、 これから大切にしたい関係が見えてくることもあります。
この記事について
この記事は、スピリチュアル系の講師やセラピストが、 クライアントとの関係や、自分自身が講師として大切にしたい価値観を振り返るための教育コンテンツです。
本文中のAさん、Bさん、Cさんは、考え方を分かりやすく説明するための仮想ケースです。 実在する人物や実際の顧客事例ではありません。
また、この記事ではスピリチュアルなサービスにおける関わり方について触れていますが、 スピリチュアルな考え方を科学的・医学的な事実として示すものではありません。
医療、心理、法律など専門的な判断が必要な内容については、 講師だけで対応しようとせず、 必要に応じて適切な専門家や専門機関へ相談することが大切です。
強い心身の苦痛や生活上の困難が続いている場合には、 スピリチュアルなサービスを医療や心理的支援の代わりにせず、 適切な専門家へ相談してください。