
他者への貢献と、無料で仕事を引き受けることは別です|講師が大切にしたい喜びと仕事の範囲
生徒さんが理解できて、表情が明るくなった。クライアントが、自分で次の一歩を考えられるようになった。
そんな様子を見て、うれしくなることはありませんか。
誰かの役に立てたと感じることが、自分の喜びや幸せにつながる。その気持ちは、講師として仕事を続ける理由の一つになるでしょう。
一方で、「人に貢献したい」という思いから、予定にない相談や作業まで無料で引き受け、負担が増えてしまうこともあります。
他者への貢献は、無償で仕事を引き受け続けることと同じではありません。相手の役に立ちたいという気持ちと、提供する仕事の条件は、分けて考えてよいのです。
このシリーズでは、30代以降のスピ系女性講師が、貢献する喜びを大切にしながら、自分の仕事を続けられる形に整える方法を考えます。
Day1では、まず、貢献と無料対応を混同しやすい場面を整理していきましょう。
他者に貢献して喜びを感じることは、偽善ではありません
人の役に立ったときに自分もうれしくなると、「結局、自分が満足したいだけなのだろうか」と考える方もいるかもしれません。
しかし、自分にも喜びがあるからといって、その行動が直ちに偽善になるわけではありません。
相手が理解できたことを喜ぶ。困っていたことが整理され、安心した様子を見てうれしくなる。そうした気持ちを否定する必要はありません。
確認したいのは、自分が満足したかだけでなく、相手が望む支援になっているかという点です。
- 相手が必要としていることを、確かめているでしょうか。
- 相手が断ったり、別の方法を選んだりできるでしょうか。
- 感謝や同意を、当然の見返りとして求めていないでしょうか。
- 自分のよい行いを示すために、相手の事情を使っていないでしょうか。
相手の意思を尊重しながら役に立とうとすることと、自分が喜びを感じることは、両立できます。
貢献を考える問いと、無料対応を決める問いは違います
他者への貢献を考えるときは、「この人に、どんな役立ち方ができるだろう」と問いかけます。
一方、仕事の条件を決めるときは、「何を、どこまで、どんな料金や時間で提供するか」を考えます。
この二つを混ぜると、「役に立ちたいなら、無料で対応するべきだ」という結論に進みやすくなります。
けれど、有料の講座でも、相手が学びを得られる内容を提供することは貢献です。相談の時間を決め、その時間内で丁寧に話を聞くことも、相手の役に立つ仕事です。
無料だから貢献になる、有料だから貢献ではない、とは言えません。
相手に役立つ内容を提供することと、その提供に料金を設けることは、一緒に考えられます。
もちろん、料金を受け取るだけで役に立つわけでもありません。何を提供するかを説明し、約束した内容に沿って対応することが大切です。
無料で仕事の結果を求めることと、用意された無料サービスを使うことも別です
無料の記事を読む、公開されている資料を受け取る、案内された無料体験に参加する。これらは、提供者が用意した条件で利用することです。
それに対して、案内に含まれていない個別の判断や作業まで、当然に無料で求める場合は、範囲を確認する必要があります。
たとえば、一般向けの説明を読めることと、自分だけの事情を詳しく見てもらえることは、同じではありません。
受け取る側も、「これは無料で案内されている内容か」「個別の仕事をお願いしているのか」を区別すると、お互いの認識をそろえやすくなります。
ただし、依頼が来た時点で、相手が仕事を軽く見ていると決めつける必要はありません。提供範囲が伝わっていない場合もあるため、まずは説明と確認から始めましょう。
親切に答えた一回が、いつもの対応だと思われることがある
以下は、考え方を説明するための架空の例です。
ある女性講師が、講座終了後に、生徒さんから個人的な相談を受けました。
その日は時間に余裕があり、少し話を聞きました。後日、同じ生徒さんから、詳しい相談がメッセージで届きます。
講師は「前回は、そのときだけのつもりだった」と感じます。一方、生徒さんは「講座を受けたら、この相談にも答えてもらえる」と理解していました。
ここで起きているのは、対応範囲についての認識の違いです。
講師の中だけにある「今回は特別」という考えは、説明しなければ相手にはわかりません。
親切そのものをやめるのではなく、今回の対応がどのような位置づけなのかを伝えることが必要です。
相手に勘違いさせないために、説明しておきたいこと
何について対応するのか
講座で扱う内容への質問なのか、個人の事情を詳しく整理する相談なのか。まず、その違いをわかりやすくします。
「講座の手順についての質問は受け付けます。個別のご事情を詳しく伺う相談は、別の予約で承ります」と伝えられます。
どのくらいの時間や期間で対応するのか
「いつでも相談してください」という言葉だけでは、対応時間や期間が伝わりません。
受付時間、返信の目安、質問できる期間など、自分が実際に守れる条件を案内します。
親しみやすい言葉を使う場合も、必要な条件を添えると安心です。
何を提供し、どこから別の依頼になるのか
簡単な案内と、資料を確認して行う個別の回答では、必要な作業が違います。
「詳しい内容の確認が必要なため、ここからは個別相談として承ります」と説明できます。
有料になる場合は、料金や内容を先に伝え、相手が申し込むかどうかを選べるようにします。
講師が引き受けると説明した内容や、自分の説明不足を補う対応まで、すべて追加料金の話にする必要はありません。まず、何を約束していたかを確認しましょう。
自分が喜べることと、無理なく続けられることを確かめる
誰かが喜んでくれると、もう少し役に立ちたいと思うことがあります。
その気持ちは大切にできます。ただし、その場でうれしかったことと、同じ対応を続けられることは別です。
引き受けたあとに、次のような状態になっていないかを振り返ってみてください。
- 予定していた準備や休息の時間がなくなっている。
- ほかの生徒さんへの対応が遅れている。
- 断れなかったことへの不満が残っている。
- 感謝されないと、強く落ち込んだり腹が立ったりする。
- 同じ依頼が来ることを、負担に感じている。
当てはまることがあれば、相手への気持ちだけでなく、自分の対応範囲も見直してみましょう。
自分の喜びを、相手からの感謝だけに預けないことも大切です。相手の反応を確かめつつ、自分が約束した仕事を丁寧に行えたかも振り返ります。
無料で提供するときも、自分で範囲を決めてよい
無料の活動を、すべてやめる必要はありません。
一般向けの記事、短い体験、地域での活動など、自分の意思で無償の提供を選ぶこともできます。
その場合も、目的と範囲を決めておきましょう。
- 誰に、何を届けたいのか。
- どこまでの内容を提供するのか。
- どのくらいの時間を使うのか。
- 個別の対応を含むのか。
- 続けるかどうかを、いつ見直すのか。
無料の提供を選んだとしても、その後の依頼を無制限に引き受ける約束にはなりません。
また、無料の案内に参加した人へ、購入や申込みを当然のように求めることも避けましょう。次のサービスを案内するときも、本人が選べる形にします。
断るときも、相手の役に立つ伝え方はできます
対応できないことを伝えると、貢献できなかったように感じる方もいるかもしれません。
しかし、自分が引き受けられることを明確にすることは、相手が次の方法を選ぶ助けになります。
たとえば、次のように伝えられます。
「この内容は、講座に含まれる質問対応の範囲を超えるため、個別相談で承ります。ご希望でしたら、内容と料金をご案内します」
自分の専門外であれば、できないことを伝える必要があります。
「私の提供内容では、責任を持ってお答えできない内容です」と説明し、必要に応じて適切な相談先を探すよう案内できます。
何でも引き受けることだけが、親身な対応ではありません。相手に曖昧な期待を持たせず、自分が提供できることを伝えることも大切です。
今日の小さなワーク:最近の対応を一つ振り返る
最近、「役に立ちたい」と思って引き受けたことを一つ選んでください。
その対応について、次の五つを考えてみましょう。
- 相手は、何を求めていましたか。
- 自分は、何を提供すると伝えましたか。
- 時間、内容、料金について、認識はそろっていましたか。
- 自分の意思で引き受けましたか。それとも、断りにくさがありましたか。
- 次も同じ対応をするなら、何を先に説明したいですか。
振り返って曖昧な部分が見つかっても、自分や相手を責めるための材料にする必要はありません。
「次からは、個別相談は別の予約になると先に伝える」など、説明を一つ整えることから始めてみてください。
よくある質問
Q1. 人に貢献することで自分も幸せになるなら、自分のためにしているだけではありませんか?
相手の役に立ち、自分もうれしくなることは両立します。自分に喜びがあるだけで、偽善になるわけではありません。相手の希望を確認しているか、感謝や同意を無理に求めていないかを確かめながら、かかわり方を考えましょう。
Q2. 有料にすると、相手を助けたい気持ちが薄いと思われませんか?
料金があることと、相手を大切にすることは矛盾しません。何を提供するか、どこまで対応するかを先に説明し、相手が選べるようにします。料金の有無だけでなく、約束した内容に沿って丁寧に対応することが大切です。
Q3. これまで無料で答えていた相談を、今後は有料にしてもよいのでしょうか?
まず、これまでに案内した内容と、現在引き受けている約束を確認します。そのうえで、今後の依頼について条件を見直すことは考えられます。変更する時期、対象となる内容、料金を事前に伝え、相手が申し込むかどうかを選べるようにしましょう。すでに行った対応へ、あとから突然料金を求めることは避けてください。
まとめ+要約
他者への貢献と、無料で仕事を引き受けることは、分けて考える必要があります。
- 相手の喜びを感じ、自分もうれしくなることは、直ちに偽善になるわけではありません。
- 有料の講座や相談でも、相手に役立つ仕事を提供できます。
- 用意された無料サービスの利用と、範囲外の個別作業を無料で求めることは別です。
- 無料対応の範囲は、講師の中だけで決めず、相手にも説明します。
- 対応できないことを明確に伝えることも、誠実なかかわり方です。
人の役に立ちたいという気持ちを、無理な引き受け方に変える必要はありません。
相手の役に立つことと、自分が続けられること。その両方を大切にするために、まずは仕事の範囲を言葉にしていきましょう。
次回予告:どこまでが質問対応で、どこからが個別の仕事なのか
Day2では、講座に含まれる質問、一般的な案内、個別相談、追加の作業をどう区別するかを考えます。相手にも伝わる形で、提供範囲を整理していきます。
貢献したい気持ちと、仕事の条件を整理したい方へ
「親切に答えていたら、対応が増えてしまった」「無料と有料の違いを、どう説明すればよいかわからない」。そんなときは、実際のやり取りと、案内している内容を整理してみませんか。
大切にしたいかかわり方を確かめながら、何を提供し、どこから別の依頼として扱うかを考えていきましょう。
ご相談の際は、生徒さんやクライアントの氏名など、個人がわかる情報を伏せてお伝えください。