
他人に影響されないでいるために。自分の信念を持ち、これからの仕事を自分で選ぶ
ほかの講師の発信を見ると、今のやり方では足りない気がする。助言を受けるたびに、自分の方針を変えたくなる。クライアントの希望を聞くと、難しいことまで引き受けてしまう。
こうした迷いがあるとき、自分自身を持つとはどういうことなのか、改めて考える必要があります。
自分の信念を持つことは、一度決めた考えを守り続けることだけではありません。大切にしたいことを確かめ、相手の意見や実際の状況を見ながら、自分の理由で行動を選ぶことです。
このシリーズでは、他人の言葉との向き合い方、信念と思い込みの違い、迷った場面での対応、判断を整理する手順を考えてきました。
最終回のDay5では、それらを日々の仕事に取り入れ、過去に縛られず、これからの行動を選び続けるための方法をまとめます。
他人に影響されないとは、自分で判断できること
人とかかわって仕事をしている以上、相手の言葉から気づきを得たり、自分の考えが変わったりすることはあります。
受講者の質問から説明不足に気づくこともあれば、ほかの講師の工夫を見て、自分の講座を改善できることもあります。
そのような学びまで避ける必要はありません。
大切なのは、相手の言葉を聞いたあとに、何を取り入れ、何を確認し、どう行動するかを自分で考えることです。
「あの先生が言ったから」「断ると嫌われそうだから」だけで決めているなら、判断の理由をもう一度確かめてみてください。
自分で判断するためには、相手の意見に加えて、自分の目的、対応できる条件、確認できる事実を見ることが必要です。
講師として大切にしたい信念を、三つに絞る
自分の信念がはっきりしていないと、迷うたびに相手の考えを基準にしやすくなります。
まずは、仕事で大切にしたいことを三つ程度に絞り、短い文章にしてみてください。数は目安です。自分が普段の対応で使える内容にすることを優先します。
たとえば、次のような文章が考えられます。
- 私は、わからないことを確認し、説明できることを正確に伝えます。
- 私は、受講者が自分で考えて選べるようにかかわります。
- 私は、対応範囲を明らかにし、守れる約束をします。
これは例です。そのまま採用する前に、自分がなぜ大切にしたいのかを考えてください。
「親身な講師でありたい」なら、親身とは具体的に何をすることなのかまで書きます。話を聞く、質問の内容を確認する、返答の目安を伝えるなど、行動が見える形にします。
信念と方法を分けておく
大切にしたいことが同じでも、そのための方法は変えられます。
「わかりやすく伝える」という信念があるなら、説明の順番を変えたり、例を増やしたり、質問の時間を設けたりできます。
「毎日投稿する」という方法が負担になっているなら、届けたい相手や伝える内容を確認したうえで、頻度を見直すこともできます。
方法を変えたからといって、大切にしたいことまで失うわけではありません。今の状況に合う方法を選び直してください。
自分の対応範囲を、相手にもわかる形にする
自分の中では決めていても、相手に伝わっていなければ、希望と対応の間にずれが生まれます。
講座や相談を仕事として行うなら、次の内容を確認し、必要なことを事前に伝えます。
- どのような内容を扱うのか。
- 講座や相談に、何が含まれるのか。
- 質問を受け付ける方法と期間。
- 返信する時間帯や、返答までの目安。
- 自分の知識やサービスの範囲では対応できないこと。
たとえば、講座後の質問対応を行うなら、いつまで、どのような質問に、どの方法で答えるのかを説明します。
毎回その場で判断する負担を減らすためにも、基本の対応を決めておくと役立ちます。
すでに約束している内容がある場合は、その約束を確認してください。対応方法を変更する必要があるときは、相手への説明や調整も行います。
相手の希望を聞いてから、引き受けるかを選ぶ
対応範囲を決めることは、相手の話を聞かなくなることではありません。
希望の内容を聞き、自分が対応できるかを確認します。難しい場合は、理由と、案内できる選択肢があればそれを伝えます。
「この内容は講座の質問として対応できます」「このご相談は、現在のサービスには含まれていません」のように、具体的に説明します。
相手の希望を尊重しながら、自分が引き受ける内容を選ぶことはできます。
過去の経験は、未来を決める結論にしない
以前、講座に申し込みがなかった。意見を伝えたら反対された。依頼を断ったあと、相手との連絡が減った。
こうした経験があると、次の場面でも同じ結果を予想することがあります。
しかし、過去に起きた出来事だけで、これからの結果が決まるわけではありません。
過去を振り返るときは、出来事、そこから学べること、今回選べる行動を分けます。
- 出来事:前回の講座には申し込みがなかった。
- 確認すること:対象者、内容、案内の時期、届け方はどうだったか。
- 今回選べる行動:対象者を具体的にし、学べる内容を説明し直す。
「前回申し込みがなかったから、私は講師に向いていない」と、自分全体への評価に広げる前に、実際に見直せる部分を確かめます。
過去から得た情報は使えます。同時に、過去には試していなかった方法を選ぶこともできます。
未来を自分で作るために、今日の行動を決める
未来について考えるとき、「私はどうなりたいか」という問いは大切です。ただ、思い描くだけでは、日々の対応は変わりません。
望む働き方に近づくために、今日、自分が行うことを決めます。
たとえば、次のような行動です。
- 依頼を受けたら、内容と日時を確認してから返答する。
- 講座の案内に、対象者と対応範囲を記載する。
- わからない質問には、確認が必要であることを伝える。
- ほかの講師の発信を見たあとは、自分の目的に合うかを考える。
- 仕事の予定に、準備と休息の時間を入れる。
相手の反応や申し込みの数など、自分だけでは決められないこともあります。それでも、説明の仕方、準備、返答、学び方は、自分が選べる行動です。
未来を自分で作るという考えを、今日何をするかという具体的な選択につなげてください。
迷ったあとは、自分を責めずに対応を振り返る
判断の手順を知っていても、その場で相手に合わせてしまうことはあります。
そんなとき、「また流された」「私は何も変わっていない」と結論づける前に、どこで迷ったのかを確認します。
振り返りでは、次の四つを短く書いてみてください。
- 何を言われ、どのように対応したか。
- 対応するとき、何を大切にしようとしたか。
- 確認せずに決めたことはあったか。
- 次に同じ場面があれば、何を変えるか。
たとえば、難しい依頼を引き受けた場合は、「返答の前に予定を確認する時間を取らなかった」と、行動の中から見直す部分を探します。
必要であれば、現在の依頼についても、早めに相手へ相談し、対応内容や日時を調整します。
振り返りの目的は、自分の弱さを探すことではありません。次の判断に使える情報を残すことです。
自分で選び続けるための、一週間の取り組み
ここまで読んだら、次の一週間で試すことを一つ決めてみてください。すべてを同時に変える必要はありません。
最初に、自分の信念を一つ書く
今の仕事で大切にしたいことを、一つの文章にします。
「私は、守れる約束をします」「私は、受講者が選べるように説明します」など、自分の行動につながる文章を選びます。
次に、よく迷う場面を一つ選ぶ
SNSを見るとき、依頼を受けるとき、受講者へ返信するときなど、迷いが生まれやすい場面を選びます。
その場面で、自分の信念をどのように使うか考えます。
その場で行う対応を決める
たとえば、「依頼には即答せず、内容と予定を確認してから返す」と決めます。返答が必要なら、確認にかかる時間も相手へ伝えます。
使いたい言葉をあらかじめ書いておくと、対応するときの参考になります。
一週間後に、結果と負担を確認する
決めた対応を使えたか、相手に説明できたか、自分に無理がなかったかを振り返ります。
うまく使えなかった場合は、どこを変えれば使いやすくなるかを考えます。期限が曖昧だったなら具体的にする、説明が長かったなら短くするなど、方法を調整します。
一週間で自信を完成させようとせず、自分で選んだ対応を一つ試す期間にしてください。
講師が自分で選ぶ姿勢は、受講者の選択にもつながる
講師自身が他人の評価だけを基準にしていると、受講者にも、講師の考えに合わせることを求めてしまう場合があります。
自分の信念を持ちながら、相手にも考えや事情があることを認める。その姿勢を、講座や相談でのかかわり方に反映します。
- 説明の理由を伝え、質問を受け付ける。
- 受講者の考えを聞き、違いをすぐに否定しない。
- 自分が説明できる範囲と、わからないことを明らかにする。
- 受講者の判断を代わりに決めるような言い方を避ける。
自分自身を持つことと、相手の考えを尊重することは、両立できます。
講師として示せるのは、いつでも迷わず正解を出す姿だけではありません。確認し、考え、必要なら見直して選ぶ姿勢も、学びを支えるかかわり方になります。
よくある質問
自分の信念が変わったら、以前の自分を否定したことになりますか?
必ずしもそうではありません。経験や新しい情報から、考えを見直すことはあります。何が変わり、なぜ変えたのかを確かめてください。相手との約束や案内に関係する変更なら、必要な説明や調整も行います。
他人の反応が気になるうちは、自分自身を持てていないのでしょうか?
反応が気になることだけで、自分自身がないとは言えません。気になりながらも、事実や自分の目的を確認して行動を選ぶことはできます。気持ちが完全に落ち着くのを待つより、判断するための手順を使ってみてください。
自分で未来を作るために、過去のことは考えないほうがよいですか?
過去の経験は、学びや判断の材料になります。大切なのは、過去の結果をそのまま未来の結論にしないことです。当時と今の条件を比べ、今回選べる行動を確かめます。結果をすべて決めることはできなくても、次に取る行動は選べます。
まとめ+要約
他人に影響されないでいるためには、大切にしたい信念を言葉にし、事実と自分の予測を分けながら、行動を選ぶことが大切です。
- 他人の意見を聞いたあと、自分の目的と条件を確かめます。
- 信念を具体的な行動にし、そのための方法は必要に応じて見直します。
- 仕事の対応範囲を明らかにし、相手へ説明します。
- 過去の経験から学びながら、未来の対応を過去と同じ形に固定しません。
- 今日できる行動を一つ選び、結果と負担を振り返ります。
Day1では、自分の判断を取り戻す第一歩を考えました。Day2では、信念と思い込みを分けました。Day3では、具体的な場面での対応を見ました。Day4では、判断を整理する五つの手順を確認しました。
そしてDay5では、それらを日々の仕事に取り入れる方法をまとめました。
自分自身を持つことは、迷わなくなることではありません。迷った場面で自分の大切にしたいことを確かめ、今の状況に合う行動を選び直すことです。
これまでの経験を持ちながら、これからの対応は選べます。まずは、次に迷いやすい場面で使う言葉や行動を、一つ決めてみてください。
自分の信念と、これからの働き方を整理したい方へ
「大切にしたいことが、まだ言葉にならない」「助言と自分の考えをどう分ければよいかわからない」「クライアントとの対応範囲を見直したい」。そのような場合は、今、迷っている場面を一つ取り上げるところから始められます。
相談を希望される方は、LINEからお問い合わせください。自分の考えや仕事で困っていることを整理し、相談したい内容をお伝えください。