
他人に影響されないでいるために。自分の信念を確かめ、未来の行動を選ぶ五つの手順
人の話を聞いているうちに、自分がどうしたかったのかわからなくなる。断ろうと思っていたのに、相手の反応が気になって引き受けてしまう。ほかの講師の発信を見るたびに、仕事の方針を変えたくなる。
そんな場面で、自分に「もっと強くならなければ」と言い聞かせても、何をすればよいのかが見えないことがあります。
他人に影響されないでいるためには、その場で判断を整理する手順を持つことが役立ちます。相手の言葉、自分の想像、大切にしたいことを分けると、選べる対応が見えてきます。
Day3では、ほかの講師の発信、身近な人の助言、クライアントの要望に迷う場面を取り上げました。Day4では、そのような場面で使える五つの手順を紹介します。
自分自身を持つために、判断する時間をつくる
人に何かを言われたとき、すぐに賛成したり、反対したりする必要はありません。
内容を確かめる前に返答すると、相手の勢いや、自分の不安だけで決めてしまうことがあります。
確認が必要な場合は、「内容を確認してからお返事します」「予定を見て、明日までに返答します」と伝えて、考える時間をつくります。
すでに返答の期限を約束しているなら、その期限も確認してください。自分の判断を大切にすることと、相手との約束を守ることは、両方考える必要があります。
自分自身を持つ第一歩は、相手に合わせて即答する前に、自分で確かめる時間を持つことです。
手順1:実際に起きたことを、そのまま書く
まず、相手が言ったことや、実際に起きたことを短く書きます。
ここでは、相手の気持ちや自分の評価を加えず、確認できる内容に絞ります。
次は、考え方を説明するための架空の例です。
- 受講者から、講座の時間外に相談のメッセージが届いた。
- 知人から、毎日投稿したほうがよいと助言された。
- ほかの講師が、自分より多くの講座を開催しているのを見た。
「受講者が私に頼りきっている」「知人に今の活動を否定された」「ほかの講師に負けている」という表現には、自分の受け取り方が含まれています。
受け取り方を無理に消す必要はありません。ただ、実際に起きたこととは分けておくと、判断の根拠を確かめやすくなります。
手順2:自分が感じたことと、予測したことを分ける
次に、その出来事に対して、自分が何を感じ、何を予測したのかを書きます。
たとえば、時間外の相談が届いた場面なら、次のように分けられます。
- 感じたこと:戸惑った。断るのが怖い。今日は休みたい。
- 予測したこと:今すぐ返さなければ、冷たい講師だと思われるかもしれない。
- 確認できていること:メッセージが届いた。まだ返答していない。
不安を感じていることは、今の自分の状態です。一方で、相手がどう受け取るかは、まだ確かめていない予測です。
「怖いから断ってはいけない」とつなげる前に、怖さと判断を分けてみてください。
気持ちを認めながら、実際の約束や対応範囲を確認することはできます。
手順3:大切にしたい信念を、一つの文章にする
ここで、自分が仕事で大切にしたいことを確認します。信念とは、自分の判断の前提になる考えです。
立派な言葉にする必要はありません。普段の対応に結びつく文章にします。
- 私は、わからないことをわかったふりで説明しません。
- 私は、受講者が自分で考えて選べるように伝えます。
- 私は、対応できる範囲を説明し、約束したことを守ります。
- 私は、仕事と生活の両方を大切にして、続けられる働き方を選びます。
たとえば、「受講者を大切にする」という信念があっても、その方法が「いつでも、どんな相談にも答える」である必要はありません。
返信時間を知らせる、質問の範囲を説明する、確認してから答える。こうした方法でも、相手への配慮を示せます。
その信念が、自分を縛っていないかも確認する
書いた文章に「必ず」「すべて」「絶対に」という言葉が入っていたら、実際に守れる内容かを確かめます。
「私は、すべての受講者を必ず満足させます」では、相手の感じ方まで自分の責任として背負うことになります。
「私は、学べる内容を事前に説明し、質問や意見を聞いて改善します」なら、自分が行うことを具体的にできます。
自分の信念を持つことは、自分に厳しい決まりを増やすことではありません。何を大切にし、どう行動するかを明らかにすることです。
手順4:過去の経験と、これからの選択を分ける
過去にうまくいかなかったことがあると、今回も同じ結果になるように感じることがあります。
しかし、過去に起きたことと、これから起きることは、分けて考えられます。
たとえば、以前、返信が遅いと不満を言われた経験がある場合、次の三つを書いてみます。
- 過去に起きたこと:返信の時期を伝えず、相手を待たせた。
- そこから確認できること:返答の目安を知らせる方法を見直せる。
- 今回選べること:返信できる時間を伝え、その時間内に対応する。
過去の経験から学ぶことはできます。ただし、「前に不満を言われたから、これからは夜中でもすぐに返さなければならない」と決める必要はありません。
過去を参考にしながらも、次の行動は今の状況に合わせて選べます。
過去からの流れだけで、未来を決めない
これまで周囲に合わせてきたとしても、今後も同じように合わせ続けるしかないわけではありません。
「私は昔から断れないから」と説明するだけで終わらず、「次は条件を確認してから返答する」と、これから行うことを決めます。
過去の自分を否定する必要はありません。そのときには、そのときの事情があったかもしれません。
今は別の対応を選べるか。その問いを持つことが、未来を自分で作る行動につながります。
手順5:選択肢を並べ、次の行動を一つ決める
最後に、対応の選択肢を並べます。
迷っているときは、「全部受け入れる」か「全部断る」かの二つだけで考えてしまうことがあります。しかし、条件を調整したり、一部だけ取り入れたりする方法もあります。
- 今の条件で引き受ける。
- 対応する範囲や日時を調整して引き受ける。
- 一部だけ取り入れる。
- 必要な情報を確認してから決める。
- 理由を説明して断る。
選ぶときは、大切にしたい信念に合うか、約束を守れるか、今の時間や知識で対応できるかを確認します。
そのうえで、次に行うことを一つ決めます。「今後は自分を大切にする」だけでは、具体的な行動が見えません。
「今日、講座の案内に質問への対応時間を書く」「次の依頼では、日時と内容を確認してから返答する」のように、実行する場面がわかる形にします。
五つの手順を使った、講師の判断の例
以下は、五つの手順をまとめて使うための架空の例です。
30代のスピリチュアル系女性講師が、知人から「講師として活動するなら、毎日SNSに投稿するべきだ」と言われたとします。
本人は、講座の準備と家庭の予定があり、毎日投稿することに負担を感じています。
1.実際に起きたこと
知人から、毎日投稿することを勧められました。
2.感じたことと予測したこと
焦りを感じました。そして、「毎日投稿しなければ、仕事への意欲がないと思われるかもしれない」と予測しました。知人が実際にそう考えているかは、確認できていません。
3.大切にしたい信念
「私は、必要な人に講座の内容をわかりやすく伝え、準備の時間も確保します」と言葉にしました。
4.過去と未来を分ける
以前、発信が少なく、講座の案内が十分に届かなかったことはありました。ただし、それだけで毎日投稿が必要だとは決められません。誰に何を伝えたか、案内の時期はどうだったかも確認します。
5.次の行動を選ぶ
まずは週に二回、対象者と講座内容が伝わる投稿を行い、四週間後に反応と負担を見直すことにしました。この頻度と期間は例であり、自分の状況に合わせて決めます。
知人の助言をきっかけに発信を見直しながらも、実際の方法は自分の目的と条件から選んでいます。
自分で決めた方法でも、結果を確かめて変更してかまいません。見直すことも、自分の判断の一部です。
今日のワーク:自分の判断を一枚にまとめる
紙やメモに、次の項目を書いてください。最近迷った出来事を一つ選び、短い言葉で埋めていきます。
- 実際に起きたことは何ですか。
- 何を感じ、どんな結果を予測しましたか。
- この場面で大切にしたい信念は何ですか。
- 過去の経験から参考にできることは何ですか。
- 今回、過去とは別に選べる対応は何ですか。
- 確認が必要な情報や約束はありますか。
- 次に行うことは何ですか。
- いつ、その対応を見直しますか。
書いても決められない場合は、何が足りないのかを確認します。情報が足りないのか、対応できる時間がわからないのか、大切にしたいことが二つあって迷っているのか。迷いの内容がわかれば、次に確かめることを選べます。
すべての迷いを一度に解決しようとせず、一つの場面で使ってみてください。
よくある質問
その場ですぐに返答を求められたら、どうすればよいですか?
確認が必要な内容なら、そのことを伝え、返答できる時期を示します。すぐに決める必要がある場合も、少なくとも依頼内容、自分の対応範囲、約束できる条件を確認してください。相手に急かされていることだけを理由に、守れない約束をする必要はありません。
自分の信念を言葉にするのが難しいです。
最近の仕事で「これは大切にしたい」と感じたことから始めてみてください。正確に説明したい、質問する時間を確保したい、生活を犠牲にせず働きたいなど、具体的な場面から考えられます。最初の文章は仮のものでもかまいません。使いながら、今の自分に合う表現に直せます。
自分で選んだ行動が、うまくいかなかったらどう考えればよいですか?
結果と、自分の価値を分けて考えます。何を根拠に選び、実際に何が起きたのかを確かめ、必要な部分を見直します。自分で判断することは、必ず成功する選択をすることではありません。結果を受け止め、次の行動を選び直すことも含まれます。
まとめ+要約
他人に影響されないでいるためには、自分の判断を整理する手順を持つことが役立ちます。
- 実際に起きたことを書く。
- 感じたことと、まだ確かめていない予測を分ける。
- 大切にしたい信念を言葉にする。
- 過去の経験と、これから選べる対応を分ける。
- 選択肢を並べ、次の行動を一つ決める。
他人の意見を聞きながら、自分で選ぶことはできます。過去を参考にしながら、過去と違う対応を選ぶこともできます。
未来の結果をすべて決めることはできません。それでも、今日どんな返答をするか、何を伝えるか、どこまで引き受けるかは、自分で考えて選べます。
その一つひとつが、自分自身を持って仕事をするための行動になります。
次回の予告
最終回のDay5では、自分の判断を日々の仕事に根づかせるために、信念、対応範囲、振り返りの習慣を整理します。人の意見を受け止めながら、自分で未来の行動を選び続けるための考え方をまとめます。
自分の信念と、次の行動を整理したい方へ
「大切にしたいことはあるのに、相手の前では言えなくなる」「過去の経験が気になって、同じ対応を繰り返してしまう」。そんなときは、具体的な場面を一つ取り上げて、判断の理由を整理してみてください。
一人では整理しにくい場合は、相談をご利用ください。相手の言葉、自分の予測、大切にしたいことを分けながら、今の状況で選べる行動を考えていきます。