
その不満は、伝えていない期待から生まれていませんか?講師が改善につなげる考え方
「受講者なら、これくらいは取り組んでほしい」「一度説明したのだから、わかっているはず」「協力してくれるなら、自分から動いてほしい」。
講師として仕事をしていると、相手にこうした期待を持つことがあります。しかし、その期待は、相手にも伝わっているでしょうか。
自分の中では当たり前でも、相手と確認していなければ、受け取り方に違いが生まれます。その違いを確かめずに不満を言い続けても、改善する部分が見えないままになることがあります。
Day1では、不平不満を言うことと、改善のために動くことの違いを整理しました。Day2では、不満の中にある期待や思い込みを確かめ、具体的な意見に変える考え方を紹介します。
不満を感じたら、自分が期待していたことを確認する
不満を整理するために、まず「私は、相手に何をしてほしかったのか」と考えてみてください。
たとえば、「受講者が講座に集中していない」という不満の中には、次のような期待が含まれているかもしれません。
- 説明中は、ほかの作業をせずに聞いてほしい。
- わからないところは、その場で質問してほしい。
- 講座で紹介した練習を、次回までに試してほしい。
期待すること自体が問題なのではありません。何を期待しているのかが曖昧なままだと、相手に伝える内容も、見直す部分も曖昧になります。
「もっと真剣に取り組んでほしい」と感じたときも、どの行動を求めているのかまで具体的にしてみてください。
期待、依頼、約束を分けて考える
自分が望んでいることと、相手に頼んだこと、双方で確認したことは、同じではありません。
期待は、自分が望んでいること
「講座の前に資料を読んでおいてほしい」と思っていても、案内していなければ、自分の中にある期待です。
相手が知らない内容について、「講座に参加するなら当然でしょう」と責める前に、伝えたかどうかを確認します。
依頼は、相手にしてほしいことを伝えること
「次回までに、資料の最初の二ページを読んでください」と伝えれば、何をしてほしいのかが明確になります。
ただし、伝えたあとに、相手が対応できるかを確認する必要がある場面もあります。依頼しただけで、相手が必ず引き受けたとは限りません。
約束は、双方で内容を確認したこと
何を、いつまでに、どのように行うかを双方で確認していれば、その内容をもとに進み具合を確かめられます。
約束が守られていない場合は、伝え方だけの問題として扱わず、守られていない内容と必要な対応を話します。
不満を感じたときは、それが自分の期待なのか、伝えた依頼なのか、確認した約束なのかを分けてください。
「相手はこうするべき」を、確認できる言葉にする
「受講者なら質問するべき」「仕事を頼まれたなら、自分から報告するべき」。こうした考えがあると、相手の行動を見てすぐに不満につながることがあります。
しかし、質問の仕方がわからない、報告する時期を決めていない、説明を別の意味で受け取っているなど、確認すべきことが残っているかもしれません。
「こうするべき」と考えたら、次の問いに置き換えてみてください。
- 私は、どの行動を求めていますか。
- その行動が必要な理由を伝えましたか。
- 相手は、内容をどのように理解していますか。
- 取り組むうえで、難しい条件はありますか。
たとえば、練習をしていない受講者に対しては、「どうしてやらないのですか」と評価する前に、「どこまで取り組めましたか。進め方で迷ったところはありますか」と確認できます。
確認した結果、説明を補うのか、取り組む量を調整するのか、本人の選択として受け止めるのかを考えます。
相手の性格を決めつけると、改善する部分が見えにくくなる
「あの人はやる気がない」「いつも無責任」「何も考えていない」と言うだけでは、具体的に何が起きたのかが伝わりません。
仕事の問題として話すなら、行動と影響を示します。
たとえば、「無責任です」ではなく、「確認の返答が予定日までに届いていないため、資料の準備を進められません」と伝えます。
受講者についても、「真剣ではない」ではなく、「今回の練習は未提出でした。進めるうえで困ったことがあったか確認したいです」と話せます。
相手の人柄への評価を広げず、今回の行動について話すことで、必要な対応を具体的にしやすくなります。
前向きな意見は、事実、影響、希望、提案で組み立てる
不満を改善につなげたいときは、次の四つを目安に整理できます。
- 事実:実際に何が起きたのか。
- 影響:そのことで、何に困っているのか。
- 希望:どういう状態にしたいのか。
- 提案:どんな対応を相談したいのか。
以下は、考え方を説明するための架空の例です。
講座の運営を手伝う人から、資料への返答が届いていない場面を考えます。
「いつも協力してくれません」と言う代わりに、次のように伝えます。
「昨日までにお願いしていた資料確認の返答が、まだ届いていません。確認が終わらないと、配布の準備を進められません。今日中に確認を終えたいのですが、午後三時までに返答できますか。難しければ、対応できる時刻を教えてください。」
相手が対応できるかは、このあと確認します。返答を聞いて、予定を調整する、確認する範囲を絞るなど、次の方法を考えられます。
改善につながる意見は、自分の希望を一方的に押し通す言葉ではありません。困っている内容を示し、実行できる対応を相談する言葉です。
提案が思いつかないときは、確認を求めてもよい
問題が複雑だったり、原因がわからなかったりすると、その場では改善案を出せないことがあります。
そんなときも、困っていることを伝えてかまいません。
「同じ質問が続いていますが、説明のどこがわかりにくいのか、まだつかめていません。受講者の質問を一緒に確認したいです。」
このように、わかっていることと、まだわからないことを分けて話します。
「何を試せばよいか」「誰に確認すればよいか」を相談することも、改善に向けた行動です。
完成した解決策を用意してからでなければ、相談してはいけないわけではありません。
後ろ向きな言葉を繰り返す前に、求めている助けを伝える
不満を話しているとき、自分が何を求めているのかを確かめることも大切です。
気持ちを聞いてほしいのか、相手の意見がほしいのか、作業を手伝ってほしいのか。それによって、話の進め方は変わります。
助言を求めているように見えても、提案をすべて否定するやり取りが続けば、相手はどうかかわればよいのか迷うことがあります。
まだ方法を考える余裕がないなら、「今日は気持ちを聞いてほしいです。改善の話は、少し整理してからしたいです」と伝えられます。
意見がほしいなら、「案内文の対象者が伝わるか見てほしいです」と、確認してほしい部分を示します。
前向きな姿勢とは、いつでも明るく振る舞うことではありません。自分の状態と、必要な助けを言葉にすることも含まれます。
今日のワーク:不満の中にある期待を見つける
最近感じた不満を一つ選び、次の項目を書いてみてください。
- 実際に何が起きましたか。
- 私は、相手に何をしてほしかったのでしょうか。
- その内容は、期待、依頼、約束のどれに当たりますか。
- 相手の理解や事情について、確認していないことはありますか。
- 今、どのような影響が出ていますか。
- どんな対応を伝えたり、相談したりできますか。
最後に、相手へ伝える文章を一つ作ります。
「もっと協力してほしい」なら、何を、いつまでに、どの程度手伝ってほしいのかを書きます。
すでに伝えた約束が守られていないなら、その内容を示し、対応できるかを確認します。
相手への評価を強めるより、確認する内容と求める行動を明確にすることを意識してください。
よくある質問
こちらが何度も説明している場合も、伝え方を見直す必要がありますか?
同じ説明を繰り返す前に、相手がどこを理解できていないのか確認すると、対応を考えやすくなります。ただし、無制限に説明する必要はありません。講座に含まれる対応範囲や、資料の確認方法も伝えてください。
相手が約束を守らないのに、自分が改善を考えるのは納得できません。
相手が守っていない約束を、自分の責任にする必要はありません。約束した内容と起きている問題を確認し、相手に必要な対応を求めます。繰り返される場合は、仕事の条件や役割分担を見直すことも改善に含まれます。
不満を具体的に伝えると、関係が悪くなりませんか?
相手がどう受け取るかを完全には決められません。それでも、人柄を責める言葉を避け、事実と困っている内容、相談したい対応を伝えることはできます。問題を曖昧にしたまま我慢するより、話し合うための内容を整理してみてください。
まとめ+要約
不満を改善につなげるには、自分が何を期待していたのか、その期待を相手に伝え、確認していたのかを確かめることが大切です。
- 自分の期待、相手への依頼、双方で確認した約束を分けます。
- 「こうするべき」という考えを、具体的に求める行動に変えます。
- 相手の性格を決めつけず、実際の行動と影響について話します。
- 事実、影響、希望、提案を整理すると、相談する内容が伝わりやすくなります。
- 改善案がなくても、問題の確認や協力を求めることはできます。
「相手が悪い」と言う前に、何を伝え、何を確認したのかを見てください。そのうえで、自分が変える部分と、相手に対応を求める部分を選びます。
不平不満を消そうとするより、具体的に話し合える内容へ変えることから始めてみてください。
次回の予告
Day3では、受講者への不満、集客への不満、仕事を手伝う人への不満を、具体的な場面で考えます。不満を言うだけの対応と、確認や提案につなげる対応を、説明用の例で見ていきます。
期待と約束を整理し、改善につなげたい方へ
「相手に求めすぎているのか、必要な対応を求めているのかわからない」「不満を伝えると、責める言い方になってしまう」。そんなときは、実際に起きた出来事と、望んでいた行動を分けて書いてみてください。
一人では整理しにくい方は、LINEからご相談ください。講座やクライアント対応で困っている場面、確認したいことをお伝えください。