
スピ系講師が自分も幸せなまま相談を受けるための実践手順
はじめに
クライアントが相談に来ると、スピ系講師として「少しでも幸せになってほしい」と思うでしょう。
その一方で、自分自身が疲れていたり、悩みを抱えていたりすると、心の中に迷いが生まれることがあります。
「自分は幸せではないのに、クライアントの幸せを願ってもよいのだろうか」
「自分が整っていないのに、人を支える資格があるのだろうか」
「相手を幸せにできなかったら、講師として失格なのではないか」
このような迷いをなくすために必要なのは、いつでも完璧に幸せでいることではありません。
必要なのは、自分の状態を確認し、自分ができる範囲を知り、相談の前後で心を整える習慣です。
Day3では、クライアントの幸せを願いながら、講師自身も無理をしないための具体的な手順を紹介します。
目次
自分も幸せなまま支援するための三つの段階
クライアントの相談を受けるときは、相談中の言葉だけに気をつければよいわけではありません。
相談前、相談中、相談後の三つの段階で、自分と相手の状態を確認することが大切です。
| 段階 | 確認すること | 目的 |
|---|---|---|
| 相談前 | 自分の心と体に相談を受ける余裕があるか | 無理な状態で始めないため |
| 相談中 | 相手の望みを決めつけていないか | 講師の考えを押しつけないため |
| 相談後 | 相手の問題を自分の中に残していないか | 相談の負担を引きずらないため |
この三つを繰り返すことで、クライアントを大切にしながら、自分の心も守りやすくなります。
良い講師とは、何でも引き受ける人ではありません。
自分の状態を知り、できることを丁寧に行い、できないことを正直に伝えられる人です。
相談前に自分の状態を確認する
相談が始まる前に、まず確認したいのはクライアントの状態ではなく、自分自身の状態です。
講師が強く疲れていると、普段なら落ち着いて聞ける言葉にも反応しやすくなります。
自分の悩みと似た相談を受けたときには、相手の話よりも自分の感情が前に出ることもあります。
相談前の確認は、長い時間をかける必要はありません。 一分から三分ほどでも十分です。
相談前に確認する四つのこと
-
体の状態
強い疲れ、眠気、痛み、息苦しさなどはないか確認します。 -
心の状態
不安、怒り、悲しみ、焦りが強くなっていないか確認します。 -
相談を受ける余裕
相手の話を急がせずに聞ける状態かを確認します。 -
自分の役割
相手を幸せにするのではなく、相手が自分で選ぶための支援をすると確認します。
相談前の一分確認
次の文章を、心の中でゆっくり確認してください。
今の私の体は、どのような状態だろう。
今の私の心は、どのような状態だろう。
私は今日、相手の話を落ち着いて聞けるだろうか。
私は相手を変えるのではなく、相手が自分の答えを見つける時間を支える。
確認した結果、少し疲れている程度であれば、相談時間を短くしたり、休憩を入れたりすることで対応できる場合があります。
しかし、強い動揺がある、相手の話を冷静に聞けそうにない、体調が大きく崩れているという場合は、予定を変更する判断も必要です。
「予約が入っているから、どんな状態でも相談を受けなければならない」と考えないようにしましょう。
無理な状態で相談を受けることは、講師にもクライアントにもよい結果につながりにくくなります。
相談中に相手の幸せを決めつけない
クライアントに幸せになってほしいと思う気持ちは、とても大切です。
ただし、「この人にとっての幸せはこれだ」と講師が先に決めてしまうと、相手の本当の望みが見えにくくなります。
たとえば、仕事に悩んでいるクライアントがいたとします。
講師は「今の仕事を辞めて、好きなことを仕事にするのが幸せだ」と考えるかもしれません。
しかし、クライアントが本当に望んでいることは、退職ではなく、今の職場で無理なく働ける状態かもしれません。
または、すぐに環境を変えることではなく、自分の気持ちを整理する時間を求めているだけかもしれません。
講師が考える幸せと、クライアントが望む幸せは同じとは限りません。
答えを出す前に確認する
相手の話を聞いてすぐに助言をするのではなく、まず次の三つを確認します。
- クライアントは今、何に困っているのか
- どのような状態になれば、少し楽になるのか
- 今の本人にできそうなことは何か
私は今、クライアントの望みを聞いているだろうか。
それとも、自分が正しいと思う答えに導こうとしているだろうか。
「幸せにしてあげる」から「幸せを一緒に考える」へ
「私がこの人を幸せにする」と考えると、講師の責任が大きくなりすぎます。
一方で、「この人が自分に合った幸せを見つけられるように、一緒に整理する」と考えると、クライアント本人の力を大切にできます。
| 背負いやすい考え方 | 支援につながる考え方 |
|---|---|
| 私がこの人を変えなければならない | 相手が自分で選べるように手伝う |
| 正しい答えを教えなければならない | 考えるための見方を渡す |
| 今日中に答えを出さなければならない | 今決められることだけを確認する |
| 行動させなければ相談に意味がない | 本人が納得できる速さを尊重する |
相談後に気持ちを持ち帰らない
相談が終わっても、クライアントの言葉や表情が頭から離れないことがあります。
「もっと違う言い方があったのではないか」
「あの人は本当に大丈夫だろうか」
「今ごろ落ち込んでいるのではないか」
相手を気にかけることは自然です。
しかし、相談が終わった後も長く考え続けると、自分の生活に戻れなくなります。
相談後には、相手の気持ちと自分の気持ちを分けるための時間をつくりましょう。
相談後の五分整理
-
できたことを書く
今日の相談で、丁寧にできたことを一つ書きます。 -
気になったことを書く
引っかかっている言葉や場面を、短く書きます。 -
自分の責任か確認する
それが自分で対応できることか、相手が選ぶことかを分けます。 -
次回に生かすことを一つ決める
改善点があれば、一つだけ決めます。 -
相談の終了を言葉にする
「今日の相談はここで終わり。ここからは自分の時間に戻る」と確認します。
振り返りは、自分を責めるために行うものではありません。
できたことを認め、必要な改善だけを残し、それ以外を手放すために行います。
体を使って切り替える
気持ちだけで切り替えにくいときは、体を動かす方法が役立ちます。
- 窓を開けて空気を入れ替える
- 水や温かい飲み物を飲む
- 手を洗う
- 肩や首をゆっくり動かす
- 短い距離を歩く
- 相談に使った机を片づける
- 着ている上着やアクセサリーを替える
特別な方法でなくてもかまいません。
「相談の時間」と「自分の生活」を分ける合図を決めておくことが大切です。
クライアントの本当の望みを確認する質問
クライアントの幸せを講師が決めないためには、質問を使って本人の気持ちを確認します。
難しい質問をする必要はありません。
本人が自分の言葉で考えられる、やさしく開かれた質問を使いましょう。
今の悩みを整理する質問
- 今、いちばん苦しいと感じていることは何ですか?
- その出来事の中で、特に気になっていることは何ですか?
- どのようなときに、つらさが強くなりますか?
- 反対に、少し楽に感じられるときはありますか?
望んでいる状態を確認する質問
- どのような状態になれば、今より少し安心できますか?
- 今の悩みが軽くなったら、何をしてみたいですか?
- あなたにとって、幸せとはどのような感覚ですか?
- 周りの期待ではなく、あなた自身はどうしたいですか?
小さな行動を見つける質問
- 今のあなたにもできそうなことはありますか?
- 最初の一歩を小さくするとしたら、何ができますか?
- 今日決めなくてもよいことはありますか?
- 助けを求めるとしたら、誰に相談できそうですか?
講師の提案を確認する質問
- 今の提案を聞いて、どのように感じましたか?
- この方法は、今のあなたに合いそうですか?
- 無理があると感じる部分はありますか?
- 別の方法も一緒に考えたほうがよいでしょうか?
質問の後は、すぐに次の言葉を重ねず、相手が考える時間を待ちましょう。
沈黙があっても、急いで答えを埋める必要はありません。
クライアントが自分の気持ちを見つける時間も、相談の大切な一部です。
相談場面の実例
ここでは、クライアントの幸せを背負いすぎる相談と、本人の力を大切にする相談の違いを見ていきます。
相談内容
40代の女性クライアントが、「今の仕事が苦しいので辞めたい。でも収入がなくなるのが怖い」と相談しました。
講師が答えを決めてしまう場合
「苦しい仕事を続けるのは、自分を大切にしていないということです。今すぐ辞めて、本当にやりたいことを始めたほうが幸せになれます」
この言葉は、講師の考えとしては間違っていないかもしれません。
しかし、クライアントの生活、家族、貯金、体調、準備の状態が確認されていません。
「辞めることが幸せ」という答えを、講師が先に決めています。
本人の望みを確認する場合
「今の仕事のどのようなところが、いちばん苦しいですか?」
「仕事を辞めたい気持ちと、収入がなくなる不安では、今はどちらが強いですか?」
「すぐに辞める以外にも、勤務時間を減らす、休みを取る、別の仕事を探してから辞めるなどの方法があります。今のあなたに合いそうなのはどれでしょうか?」
「今日すべてを決めなくても大丈夫です。まず確認できることから始めるとしたら、何ができそうですか?」
この関わり方では、講師が退職を決めるのではなく、クライアントが自分に合った道を考えられるように支えています。
最終的に仕事を辞める場合も、続ける場合も、その選択はクライアント本人のものです。
相談後の講師の振り返り
できたこと
退職を急がせず、本人の不安と望みを確認できた。
気になったこと
自分にも仕事を辞めた経験があるため、退職を勧めたい気持ちが少し出た。
自分の責任
自分の経験を正解として押しつけず、選択肢の一つとして伝えること。
クライアントの責任
実際に辞めるか、いつ辞めるか、どの準備をするかを決めること。
このように整理すると、講師は自分の経験を生かしながらも、相手の人生を背負わずに済みます。
相談前後のチェックリスト
次のチェックリストは、毎回すべてを完璧に行うためのものではありません。
自分の状態を知り、必要なところを整えるために使ってください。
相談前チェック
- 今日は相手の話を落ち着いて聞ける状態である
- 強い疲れや痛みを無視していない
- 自分の悩みと相手の悩みを分けられそうである
- 相談時間と終了時間を確認している
- 今日の自分の役割を確認している
- 相手を変えるのではなく、考える支援をすると意識している
相談中チェック
- クライアントの言葉を途中で決めつけていない
- 自分の経験を正解として押しつけていない
- 相手が望む状態を確認している
- 提案を受け入れるかどうかを本人に確認している
- 不安をあおって行動させようとしていない
- 時間内でできることを扱っている
相談後チェック
- 今日できたことを一つ確認した
- 気になった点を短く記録した
- 自分の責任と相手の責任を分けた
- 改善することを一つだけ決めた
- 相談の時間が終わったことを確認した
- 自分の生活に戻るための行動をした
Day3ワーク
今日のワークでは、次回の相談で使う自分専用の流れを作ります。
ワーク1:相談前の言葉を決める
相談前に自分へ伝える言葉を一つ書いてください。
例
- 私は相手を変えるのではなく、相手が考える時間を支える
- 私は今日できることを丁寧に行う
- クライアントの人生は、クライアント本人のものである
- 私は完璧な答えを出さなくてもよい
ワーク2:相談中に使う質問を三つ選ぶ
次回の相談で使いやすい質問を三つ選び、書いておきましょう。
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ワーク3:相談後の切り替え行動を決める
相談後に、自分の生活へ戻るための行動を一つ決めます。
例
- 温かい飲み物を飲む
- 五分だけ外を歩く
- 相談ノートを閉じて机を片づける
- 肩を回して深く息をする
- 「今日の相談は終わり」と声に出す
ワーク4:自分の幸せを一つ予定に入れる
クライアントのための予定だけでなく、自分が安心したり、うれしくなったりする時間も予定に入れてください。
大きな予定でなくてかまいません。
- 好きな場所でお茶を飲む
- 一人で静かに過ごす
- 好きな音楽を聞く
- 家族や友人と話す
- 何もせずに休む
クライアントの幸せを喜ぶためにも、自分の中に余裕が必要です。
自分を満たす時間は、相談とは別の大切な仕事だと考えてください。
他人の幸せから受け取る喜びを正しく知る
講師自身の幸せが、クライアントを含めた他人の幸せから生まれることは、悪いことではありません。
クライアントが安心した顔を見せてくれたとき、行動できたと報告してくれたとき、自分まで温かい気持ちになることがあります。
その喜びは、講師としての大切な力です。
人の幸せを自分のことのように喜べるからこそ、真剣に話を聞き、丁寧に支えたいと思えるのでしょう。
ただし、自分がどのくらい他人の幸せから満足を受け取っているかは、知っておく必要があります。
- クライアントから感謝されたとき、幸せを十段階で表すといくつですか?
- クライアントから反応がないとき、気持ちはどのくらい下がりますか?
- 相談がない日にも、自分の価値を感じられますか?
- クライアントとは関係なく、自分が幸せを感じる時間はありますか?
他人の幸せから大きな喜びを受け取る人は、その力を否定する必要はありません。
ただし、幸せのすべてをクライアントの反応に預けないことが大切です。
クライアントの幸せを喜ぶ自分と、自分の生活の中で幸せを感じる自分。
その両方があることで、支援は長く続けやすくなります。
まとめ・要約
スピ系講師が自分も幸せなままクライアントを支えるためには、相談前、相談中、相談後の三つの段階で自分の状態を確認することが大切です。
相談前には、心と体に相手の話を聞く余裕があるかを確認します。 強い疲れや動揺があるときは、時間を短くしたり、予定を変更したりする判断も必要です。
相談中は、講師が考える幸せをクライアントに押しつけないようにします。 相手が何に困り、どのような状態を望み、今何ができそうなのかを質問しながら確認しましょう。
相談後は、できたこと、気になったこと、自分の責任、相手の責任を分けます。 そのうえで、相談の終了を言葉や行動で確認し、自分の生活に戻ります。
クライアントの幸せから講師自身が喜びを受け取ることは、自然で大切なことです。 ただし、クライアントの結果だけを、自分の価値や幸せのすべてにしないようにしましょう。
相手の幸せを願いながら、自分の心も守る。 その両方を大切にすることが、無理なく長く相談を続けるための土台になります。
よくある質問
相談前に自分の状態が悪いと気づいたら、必ず延期したほうがよいですか?
必ず延期しなければならないわけではありません。 少し疲れている程度で、落ち着いて話を聞けるのであれば、時間を短くしたり、相談の前後に休憩を入れたりする方法があります。 強い動揺や体調不良があり、相手の話を十分に聞けそうにない場合は、予定の変更を考えましょう。
クライアントに質問しても、「わかりません」と言われます。
すぐに答えが出ないことは珍しくありません。 「今すぐわからなくても大丈夫です」と伝えたうえで、質問を小さくしてみましょう。 たとえば「今より少し楽になるとしたら、何が変わっていると思いますか」と聞くと、答えやすくなる場合があります。
自分の体験を話すことは、押しつけになりますか?
自分の体験を話すこと自体が押しつけになるわけではありません。 「私の場合はこうでしたが、あなたにも同じ方法が合うとは限りません」と伝え、選択肢の一つとして紹介することが大切です。
相談後もクライアントのことが心配で、考えるのをやめられません。
心配を無理に消そうとしなくてもかまいません。 まず、何が心配なのかを書き出し、それが自分で対応できることか、相手が選ぶことかを分けてください。 自分が対応すべきことがなければ、「今できることは終えた」と確認し、自分の時間に戻りましょう。
クライアントの幸せを願う気持ちが弱い日は、相談を受けないほうがよいですか?
毎回同じ強さで願えなくても問題ありません。 講師にも気分や体調の変化があります。 大切なのは、強い感情を持つことではなく、相手を尊重し、約束した内容を丁寧に行えるかどうかです。
自分の幸せを優先すると、クライアントに申し訳なく感じます。
自分の幸せを大切にすることは、クライアントを軽く扱うことではありません。 自分に余裕があるほうが、相手の話を落ち着いて聞き、必要な支援を丁寧に行いやすくなります。 自分を整えることも、責任ある活動の一部です。
自分を整えながら相談を続けたい方へ
クライアントの幸せを願うほど、自分の疲れや不安を後回しにしてしまうことがあります。
「相談後も相手のことを考え続けてしまう」
「どこまで支えればよいのかわからない」
「自分が幸せではないことに罪悪感がある」
「相手の結果で、自分の価値まで決めてしまう」
このような悩みがある方は、LINEからご相談ください。
今の相談の受け方や活動の状態を整理しながら、クライアントを大切にし、自分自身も無理をしない支援の形を一緒に考えます。